タイトル | 異常プリオン蛋白質のコア領域のN末端の構造解析 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 | 2003~2004 |
研究担当者 |
横山 隆 岩丸祥史 牛木祐子 高田益宏 今村守一 品川森一 林 浩子 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 異常プリオン蛋白質(PrPSc)はプリオンの主要な構成成分で、蛋白質分解酵素処理によりPrPcoreと呼ばれる断片を形成する。牛海綿状脳症(BSE)とスクレイピーPrPcoreのN末端の解析により、両者の性状が異なっていることを明らかとした。 |
キーワード | 牛海綿状脳症、スクレイピー、異常プリオン蛋白質、プロテイナーゼK |
背景・ねらい | 牛海綿状脳症(BSE)、羊・山羊のスクレイピーはプリオンが原因の中枢神経系疾患で、感染動物の脳内には異常プリオン蛋白質(PrPSc)が蓄積する。PrPScは宿主の正常プリオン蛋白質(PrPC)の構造異性体であるが、種々のプリオンによって異なる構造を示すことが知られている。動物種間の感受性や潜伏期間などのプリオン株の違いは、PrPScの構造の多様性に起因すると考えられているが、病原体ならびにPrPScの構造の詳細は十分に明らかにされていない。PrPScの性状解析は、病原体プリオンの本態を明らかにすることにつながると考えられる。BSEおよび羊スクレイピーをマウスへ伝達し、マウス脳内に蓄積したPrPScについて、プロテイナーゼK(PK)消化後のコア断片(PrPcore)のN末端を解析し、両者の性状の差を明らかにした。 |
成果の内容・特徴 | 1. BSEプリオン(BSE/Chiba/1)を野生型マウスで伝達した。マウスでの潜伏期は、それぞれ初代:409.0日、2代:196.8日、3代:173.6日であった。 2. 各継代マウスの脳内に蓄積したPrPScのPrPcoreについてウエスタンブロット解析を行った。BSEプリオン感染マウスのPrPcoreは、スクレイピー感染マウスのPrPcoreに比べて分子量が小さいことが示された(図1)。 3. PrPcoreのN末端のアミノ酸配列を調べたところ、スクレイピーのPrPcoreは低濃度(25μg/mL)のPK処理ではG81、G85、G89がN末端として検出された。PK濃度の増加(800μg/mL)に伴ってN末端はG89に収束した。一方、BSEのPrPcoreは低濃度(25μg/mL)のPK処理でもN96に収束していた(図2)。 4. 以上の結果から、同じマウスのPrPCの変換により形成されたにも関わらずBSEとスクレイピーのPrPScはN末端領域のPK抵抗性に差があることが示された。スクレイピー由来のPrPcoreはヘテロな断端を持つPrP断片の集合体であり、一方BSEでは均一な断片から構成されることが示された(図2)。 5. スクレイピー由来PrPcoreとBSE由来PrPcoreの分子量の差は720~1,640Daであることが明らかとなった(図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. BSEとスクレイピーのPrPScの構造の差を示す有用な情報が得られた。 2. マウスで馴化したBSEプリオン株はPrPScの構造解析に有用な研究ツールとなる。 |
カテゴリ | 抵抗性 羊 山羊 |