タイトル | Histophilus somni免疫グロブリン結合タンパク質の推定アミノ酸配列の特徴と免疫学的性状 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 | 2001~2005 |
研究担当者 |
F.D.Bastida-Corcuera(UCSD) J. D. Sanders(UCSD) L. B. Corbeil(UCSD) 川嶌健司 田川裕一 内田郁夫 |
発行年度 | 2005 |
要約 | Histophilus somniの免疫グロブリン結合タンパク質IbpAの推定アミノ酸配列は他の細菌で知られている病原性関連高分子量タンパク質と相同性を示し、組換えIbpAフラグメントは牛に免疫することにより、H. somni気管支内接種攻撃に対して防御効果を示す。 |
キーワード | ウシ、Histophilus somni、免疫グロブリン結合タンパク質、免疫防御 |
背景・ねらい | Histophilus somniはウシの髄膜脳脊髄炎や肺炎の起因菌として重要である。本菌は菌体表面や菌体外に病原性発現に関与すると考えられる免疫グロブリン結合タンパク質を産生している。免疫グロブリン結合タンパク質は質量270 kDa前後の複数のタンパク質バンド(IbpA)と76 kDaのタンパク質バンド(p76)として検出される。これまでにp76の遺伝子領域は同定されているが、IbpAの遺伝子領域は未同定のままである。そこで、H. somniのIbpAの遺伝学的解析を進め、その遺伝子領域の同定を行うとともに、組換えIbpAフラグメントの牛への免疫効果について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. p76遺伝子上流域の塩基配列解析によって、全長12,285 bpの巨大なオープンリーディングフレーム(ORF)を確認し、このORF由来の大腸菌発現産物にウシIgG2結合能が認められたことから、この遺伝子領域をibpAと同定した。p76遺伝子のORFはibpAと同一のフレーム内の3'端側に重なって存在した。ibpA遺伝子の直上流には1,758bpのORFが存在し、相同性検索の結果から、ibpA遺伝子産物の輸送に関わるタンパク質の遺伝子領域と推定され、当該遺伝子領域をibpBとした。 2. ibpA遺伝子産物の推定アミノ酸配列はヒト百日咳菌のコンポーネントワクチンの成分のひとつである繊維状赤血球凝集素FHAやヒト生殖感染症原因菌Haemophilus ducreyiのマクロファージ貪食機能抑制を担う高分子量分泌タンパク質LspA1及びLspA2との部分的な相同性が認められたことから、IbpAは免疫グロブリン結合能に加えて他の機能を併せもつ病原性関連タンパク質と考えられた。IbpAのアミノ酸配列の特徴を図1に示す。 3. グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タンパク質との融合組換えIbpAフラグメントGST-IbpA3(アミノ酸残基972-1515)にはウシIgG2結合能が認められた。また、実験感染牛回復期血清との強い反応性がGST-IbpA3およびGST-IbpA5 (アミノ酸残基2071-2730)に認められ、さらにGST-IbpA3免疫牛では免疫用抗原に対する強い抗体応答が認められた。GST-IbpA3の免疫効果をウシ気管支内接種攻撃により解析した結果を表1に示す。GST-IbpA3免疫牛では臨床症状の軽減、肺病変部位からの分離菌数の低下、肺病変面積の減少が認められた。 |
成果の活用面・留意点 | 1. IbpAはH. somniの病原性発現や宿主の免疫応答に関与する重要な菌体表面タンパク質であるため、その機能解析により疾病発病機序の解明を進めるとともに、ワクチン開発への応用性を追究する必要がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 輸送 |