タイトル | と畜場におけるBSE検査の定量的評価 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 | 2004~2006 |
研究担当者 |
山根逸郎 山本健久 春日文子(国立衛生研) 小林創太 西口明子 筒井俊之 |
発行年度 | 2005 |
要約 | と畜場におけるBSE検査対象牛の月齢区分の変更に伴うリスクの変化について、確率モデルを用いて定量的に評価した。検査を全月齢の牛を対象とした検査から、20、24、30ヶ月齢を超える牛を対象とした検査に変更すると、人へのリスクは増加するが、特定危険部位の除去やBSE検査による陽性牛の摘発・排除を行わなかった場合と比較するとその変化は小さいと推定される。 |
キーワード | ウシ、BSE、スクリーニング検査 |
背景・ねらい | 日本においてと畜場における牛のBSEスクリーニング検査は、国内のBSE浸潤状況を把握するためのサーベイランス及び食肉の安全性確保のための感染牛の摘発・除去という2つの目的をもって実施されている。しかしながら、BSE検査による陽性牛の摘発やフードチェーンからの除外が公衆衛生に及ぼす影響度について、定量的なリスク評価は行なわれていない。このため、確率論的リスクモデルを構築することにより、と畜場における特定危険部位の除去の有無やBSE検査月齢の変更措置がBSE病原体の人への暴露に及ぼす影響について定量的に評価する。 |
成果の内容・特徴 | 1. と畜場におけるBSE検査月齢の変更と特定危険部位(SRM)の除去の有無が人の健康に与える影響を明らかにするため、確率モデルを用いて定量的なリスク評価を行った。モデルにおいては感染牛1頭から生じる感染価(マウス脳内ID50。以下「m.i.c.ID50」)を単位として、感染牛1頭がと畜された場合にフードチェーンに入る感染価の量を推定した(図1)。 2. モデルの入力値は、論文や他の公表資料からのデータを用いたが、データがないものについては関連する実験報告などから推定を行った。モデル化にあたっての前提条件として、(1)英国などでの報告と同様にBSEの感染は1歳未満で起こる、(2)BSEの潜伏期間は英国での発生例から推定された分布に基づく、(3)SRM除去を行ったとしても一定の割合で病原体が食肉に混入する、などを仮定した。 3. 日本においては多くの牛が若齢でと畜されるため、BSEに感染した牛がと畜されたとしても、その多くは摘発可能な量の病原体が蓄積しておらず、感染牛がと畜場のBSE検査で摘発される確率は20%程度と推定された。と畜場における全年齢の牛を対象とした検査(シナリオ3)を20、24、30ヶ月齢を超える牛を対象とした検査(シナリオ4∼6)に変更すると、フードチェーンに混入する感染価の95パーセント値は増加する(表1)。しかしながら、特定危険部位の除去やBSE検査による陽性牛の摘発・排除を行わなかった場合(シナリオ1)と比較すると、感染価は大きく削減されており、また、検査月齢の変更による感染価の変化は小さいと推定された(表1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本研究で得られたリスク評価の結果は、あくまで一つのアプローチによって得られたものであって、リスク管理措置の決定に際しては、他の多くの情報や関係者とのリスクコミュニケーションの結果などを考慮して行う必要がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | くこ 肉牛 |