鶏の新興感染症であるStreptococcus gallolyticus subsp. gallolyticus 感染症の我が国での発生確認

タイトル 鶏の新興感染症であるStreptococcus gallolyticus subsp. gallolyticus 感染症の我が国での発生確認
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2007~2007
研究担当者 関崎 勉
高松大輔
西屋秀樹(鹿児島県大口食検)
大澤 朗(神戸大)
発行年度 2007
要約  細菌性心内膜炎や肝臓・脾臓の壊死巣形成を主徴とするS. gallolyticus subsp. gallolyticus感染症が我が国でも発生している。
キーワード 鶏、心内膜炎、Streptococcus gallolyticus subsp. gallolyticus、グラム陽性菌
背景・ねらい  Streptococcus bovis菌群は哺乳動物などの正常細菌叢を構成する菌群であるが、コアラの腸内などから分離される没食子酸を分解する一群がS. gallolyticusと命名され、現在までに3亜種(Streptococcus gallolyticus subsp. gallolyticus, S. gallolyticus subsp. macedonicus, S. gallolyticus subsp. pasteureanus)に分類されている。本菌種は市販の同定キットではS. bovisと同定されてしまう。本菌種はヒトの心内膜炎、髄膜炎、敗血症などの臨床材料からの分離例も報告されており、公衆衛生上で重要な菌種であったが、近年、欧州において鶏の敗血症等の原因になることが明らかとなり注目されている。
本研究では、臨床的に健康な鶏の心内膜炎および肝臓・脾臓の病変部からほぼ純培養的に分離されたグラム陽性球菌が、Streptococcus gallolyticus subsp. gallolyticusであることを明らかにし、本菌感染症が我が国においても発生していることを示している。分離菌は、市販の同定キットでS. bovisと同定されるが、16S rRNA遺伝子の塩基配列決定と、タンニン酸および没食子酸の分解能試験を行うことによって、Streptococcus gallolyticus subsp. gallolyticusと同定できる。
成果の内容・特徴
  1. イボ状心内膜炎または肝臓・脾臓に壊死巣を呈した20羽の鶏の病変部(図1)からほぼ純培養的にα溶血性レンサ球菌が分離され(図2)、市販の同定キットではS. bovisと同定される。
  2. 本菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列(1,504 bp)を決定したところ、S. gallolyticus subsp. gallolyticus ATCC43143株の16S rRNA遺伝子の配列(アクセッション番号:AF104114)と99.9~100%の相同性を示す。S. bovis群から本菌種を区別するsodA遺伝子を標的とするPCR (J. Clin. Microbiol. 42:1360-1362, 2004) でも、本菌はS. gallolyticusと同定できる。
  3. タンニン酸及び没食子酸代謝能(J. Clin. Microbil. 42:4912-4913, 2004)とゲノムハイブリダイゼーションの結果、調べた25株全てが亜種gallolyticusと同定できる。このうち2株はこれまでに報告のないタンニン酸のみを代謝するパターンを示す(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. Streptococcus属菌による鶏の感染症を明らかにした我が国初の例である。本菌はヒトの感染症からも分離されることから、新たな人獣共通感染症の原因となる可能性も示唆する。
  2. デンマークでのS. gallolyticus subsp. gallolyticus感染症の発生に引き続き我が国でも発生が確認されたことは、今後世界的にも多発する可能性を示唆しており、鶏の新しい疾病として広く周知する必要がある。
  3. 病性鑑定においては、図3の手順により本菌を同定できる。
図表1 225868-1.jpg
図表2 225868-2.gif
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