タイトル |
新たに開発した豚子宮深部注入カテーテルを用いた人工授精の実用化 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 |
2007~2008 |
研究担当者 |
吉岡耕治
中野貞雄(富士平工業)
渡邊 剛(富士平工業)
野口倫子
鈴木千恵
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発行年度 |
2008 |
要約 |
子宮深部注入用カテーテルを用いると、従来より少ない精子数でも十分な受胎率及び分娩成績が得られ、生産現場においても子宮深部人工授精法の導入により精液の効率的利用を促進できる。
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キーワード |
子宮深部注入用カテーテル、精子数、受胎率、分娩成績
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背景・ねらい |
家畜の人工授精技術は、家畜改良の促進や優良遺伝子の導入、種豚維持管理費の軽減化・省力化に加えて、交配を介した感染症の蔓延予防に貢献できるため、近年養豚業界においても経営規模の拡大と一貫経営の増加に伴って利用率が高まってきている。Martinezらは、子宮深部(子宮角)に挿入可能な子宮深部注入カテーテルを開発しているが、今回、子宮内膜への損傷を軽減するために素材の改良を重ね、より安全性が高く、使い易い形状の「子宮深部注入用カテーテル」を開発し、新たに改良した子宮深部注入カテーテルを用いた子宮深部人工授精法による、より効率的な人工授精技術を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 今回開発したカテーテルは、スパイラル型カテーテルである外筒及びポリエチレン製の長さ120cmで先端が横穴式の子宮深部注入用カテーテルである内芯(図1)からなり、安全に子宮角に挿入可能(図2)な滅菌済みの器具である。
- A農場において、子宮深部人工授精法(深部授精法)のみ、あるいは従来の子宮頸管内授精法(頸管内授精法)と併用して用いることで注入総精子数を10~70億に低減しても受胎率は85.0~90.0%で、総数180億の精子を使って頸管内授精法のみで授精した対照区(85.0%)と比べて遜色ない(表1)。
- B農場において、精液の注入条件を表2の通りとした場合、深部授精法のみ(試験区2及び3:総精子数10億)を用いると、受胎率は76.2~90.5%である。試験区1~3(総精子数10または30億)における分娩豚の総産子数(10.3~11.4頭)及び生産子豚数(8.4~9.6頭)は、総精子数50億の精子を使って頸管内授精法のみで授精した対照区(9.2頭及び7.4頭)と同等である。
- 子宮深部授精では、多くとも5億程度の精子を2回注入(頸管内授精法に比べ5~20%の総精子数)することで、子宮頸管内授精と同様の分娩成績が得られる。
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成果の活用面・留意点 |
- 今回開発したカテーテルは、国内で認可された動物医療機器として普及可能な豚子宮深部注入カテーテルである。
- 子宮深部注入カテーテルを用いた子宮深部人工授精法では、市販の精液を購入して用いた場合の人工授精にかかる費用は頸管内授精法に比べ6割程度削減できると試算される。
- 頸管内授精法に比べて精子数は5~20%低減できることから、凍結精液や希少精液を有効に活用することが期待され、雄畜の飼養頭数を減らすことで飼養コストを節減できる。
- 子宮深部注入カテーテルは、先端を子宮の奥に挿入するため、子宮内に病原体等を持ち込まないよう、取り扱いは衛生面に十分配慮する。
- 子宮深部注入カテーテルを用いた子宮深部人工授精では、授精作業時間が子宮頸管内授精法に比べ延長する場合がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
経営管理
コスト
省力化
豚
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