タイトル |
反芻家畜消化管におけるイネ科牧草リグニンの可溶化 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1994~1994 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
反芻家畜に摂取されたイネ科牧草リグニンの一部は、ルーメン内でさまざまな分子量の可溶性リグニンフラグメントとして繊維から解離し、糞中に排泄される。
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背景・ねらい |
牧草におけるリグニンは、反芻家畜の重要なエネルギー源である繊維性多糖の分解・消化を妨げる主要成分として認識されており、リグニン自身はほとんど消化されることなく糞中に排泄されると考えられてきたが、消化管内におけるその消長の詳細は不明のままである。本来、不溶性のリグニンが消化管内で何らかの作用を受けて可溶化し、排泄されるとすれば、こうした変化は牧草繊維の消化性の評価に多少とも影響すると推測される。そこで、イネ科牧草リグニンの反芻家畜消化管内における消長を解明しようとした。
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成果の内容・特徴 |
オーチャードグラスを摂取した牛のルーメン内容物および排泄糞から90%ジオキサン可溶のリグニン画分を抽出し、酢酸、エーテル等で精製後、その性状を調べた。
- ルーメン内容物及び排泄糞には、乾草にはほとんど含まれなかった可溶性リグニン画分が検出された。ルーメン内容物、排泄糞とも同様の化学成分組成を示し、リグニン以外の成分は少なかった(表1)。
- アルカリニトロベンゼン酸化の結果、可溶性リグニンはグアイアシルーシリンギル型のリグニンであることがわかった(図1)。
- 可溶性リグニン画分はルーメン内容物、排泄糞とも多分散性で(表2)、幅広い分子量分布を示した。
- 可溶性リグニン画分は80%エタノール、中性デタージェント、酸性デタージェントに可溶であった。
- イネ科牧草リグニンは反芻家畜に摂取された後、一部はルーメン内でさまざまな分子量のリグニンフラグメントとして可溶化し、ルーメン通過後はほとんど変化することなく糞中に排泄される。
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成果の活用面・留意点 |
- 繊維の消化性評価の精緻化およびリグニンの構造改変を機軸にした消化性向上技術の開発に有効な情報となる。
- ルーメン内容物や排泄糞中には、90%ジオキサンに不溶で他の溶媒に可溶のリグニン画分も存在する可能性がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
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