タイトル |
チーズ熟成中のγ−アミノ酪酸生成条件の解明とそのチーズ製造への応用 |
担当機関 |
畜産試験場 |
研究期間 |
1996~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
チーズスターターより最適pH4.7のグルタミン酸脱炭酸酵素活性を持つ乳酸菌Lactococcus lactis 01-7を分離した。01-7をスターターに用いたチーズは,pHが5.0付近まで低下したときにγ-アミノ酪酸を生成した。この菌を用いて,血圧降下作用のあるGABAを蓄積するチーズの製造が可能となった。
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背景・ねらい |
γ‐アミノ酪酸(GABA)は、タンパク質の分解によって生じるグルタミン酸が脱炭酸してできるアミノ酸であり、血圧降下作用などの機能性が注目されている。これまでチーズスタ一夕一にはGABA生成能が確認されていないため、チーズ中のGABAはスターター以外の細菌の作用により生成すると考えられている。しかし、正常なチーズにもGABAが確認される場合があり、その由来については明らかになっていない。本研究では、チーズスターターによる熟成中のGABA生成条件を解明し、GABA蓄積チーズの製造法を確立することを目的とした。
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成果の内容・特徴 |
- 市販チーズスターターの脱脂乳培養物中にGABAを確認し、スターターにGABA生成能があることを明らかにした。
- チーズスターターからGABA生成カの強いLac.lactis 01-7を分離した。01-7は作用最適pH4.7のグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)活性を持ち(図1)、pH5.0で培養すると培地中へのGABA生成が認められたが、pH5.5以上ではまったく認められなかった。
- 01-7をスターターに用いてチーズを試作した。同じGABA生成菌数ならばpHがGADの最適pHに近いほうが、また同じpHならば菌数の多いほうが、より多量のGABAを生成した(表1)。GABA生成量がスターター菌のCAD活性に依存したことから、試作チーズ中のGABAはス夕ー夕ー菌のGADにより生成したと考えられた。
- 37℃ 45℃ 55℃ 63℃、各30分 段階的に加熱することによりGAD活性を高率で保持した死菌体が調製できた(表2)。これを用いて熟成中に大量のGABAを蓄積するチーズ製造法の検討を行った。死菌体の添加方法は、セッティング時に乳中にケン濁しカードに取り込ませる方法が有効であった(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- これまでGAD活性が確認されていなかったLactococcus属乳酸菌に、新たにGAD活性を見いだし、チーズスターターの性質について新たな知見を提供した。
- 血圧降下作用が注目されているGABAを、熟成中に乳酸菌の酵素の作用でチーズに蓄積することが可能となった。
- 01-7株はタンパク質分解カが弱く単独ではチーズスターターとして使用できない。生菌、死菌体いずれを使用する場合も、他のスターターと併用することが必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
機能性
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