タイトル | ブタ卵巣および精巣におけるコレステロール合成系酵素CYP51遺伝子の発現 |
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担当機関 | 畜産試験場 |
研究期間 | 1994~1994 |
研究担当者 |
三橋忠由 小島美咲 |
発行年度 | 2000 |
要約 | コレステロールの合成系に関与するCYP51遺伝子は、ブタの卵巣では主として黄体で発現し、その発現量は発情周期のステージに依存する。また、精巣では、性成熟に伴い短いサイズのmRNAが発現する。 |
背景・ねらい | 近年コレステロールの合成系に関与する新しい酵素としてCYP51が見出され、コレステロールの合成に加えて、卵子の成熟や精子形成に関与することが実験動物で示唆されているが、家畜では明かではない。家畜におけるCYP51の生殖機能への関与を明かにすることを目的として、本研究では、ブタCYP51遺伝子を単離し、ブタの生殖腺における発現様式について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. ブタCYP51は503アミノ酸よりなり、ヒトとの相同性は94%であった。CYP51遺伝子は約21kbのサイズで10個のエキソンより構成されていた。 2. 2. CYP51 mRNAのサイズは約2.4kbで、調べた臓器(肝臓, 腎臓, 肺, 心臓, 小腸, 脾臓, 胸腺, 筋肉, 子宮, 卵巣, 精巣)全てで発現していたが、肝臓、精巣、卵巣での発現が強かった。なお、本研究を通じ、CYP51 mRNAの解析はLWD豚を用いて行った。 3. 図1)。即ち、排卵4日後には発現量が増加し、黄体機能が高い7-12日で最大に達した後、急速に減少した。また、排卵直前の卵胞では発現量は低かった。このことから、CYP51は、コレステロールの合成を介して黄体の主ホルモンであるプロゲステロンの供給に関与すると考えられた。 4. 図2)。減数分裂期の精母細胞が存在する3月齢の精巣や精子が含まれる精巣上体では、1.8kbのmRNAは認められないことから、1.8kbのmRNAは精子形成過程の特定の時期の精子細胞で発現していると考えられた。また、このサイズの相違は、翻訳開始部位ではなく、poly(A)サイトの相違によることが明かになった。 5. 以上より、CYP51はブタの卵巣や精巣において、コレステロールの合成を介してプロゲステロンやテストステロンを供給することを通じ、黄体形成や機能あるいは精子形成過程に関与すると考えられる。一方、CYP51により生じるMAS(meiosis activating sterol)はマウスの卵で減数 分裂を促進するとの報告があり、MASを介しての作用機構も示唆される(図3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本研究は、CYP51が黄体機能や精子形成に関与することを示唆しており、CYP51が生殖機能の新 たな指標になる可能性がある。その作用機構に関しては今後の検討を要する。 |
図表1 | ![]() |
カテゴリ | 豚 |