タイトル |
トリチウムによる高窒素固定能根粒菌の簡易・迅速判定法 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1990~1993 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1994 |
要約 |
一部のダイズ根粒菌は窒素同定で発生する水素を酸化(水素回収活性)し、少ないエネルギーで窒素を固定する。本法は、トリチウムを用いた有用菌株のスクリーニング法であり、従来法の10日間に比べ3日間しか要しない簡易・迅速判定法である。
|
背景・ねらい |
ダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum)の水素回収活性は、ダイズの窒素固定能を向上させる形質の1つで、子実収量の増加も報告されている。この形質は、ダイズ根粒菌においては一部の菌株にしか見られないため、水素回収系をもつ菌株を選抜して接種することは、ダイズの生産性向上に有益である。しかし、従来法では、判定に長い時間がかかるうえ、培地交換などの煩雑な操作も必要である。そこで、従来法より迅速・簡便に水素回収系の有無を判定する方法が望まれていた。
|
成果の内容・特徴 |
- トリチウムを含む放射性水素ガスは放射性水素化ホウ素ナトリウムより発生させる(図1)。
- 水素回収活性誘導培地とリン酸緩衝液を1:4に混合した培地に菌を接種し、1日間振盪培養した後、酸素2%の気相に換え、放射性水素ガスを加えて1日間培養する。培養後、液体シンチレーションカウンターで培地に取り込まれたトリチウム量を測定する(図3)。
- 使用後の放射性水素ガスはパラジウム石綿で酸化し、硫酸で捕集する(図2)。
- 水素回収活性がない菌におけるトリチウムの取り込みは培養液だけの対照区と有意差がないが、水素回収活性がある菌においては取り込まれるトリチウムの量は対照区の10倍から100倍大きい。両者の間でトリチウムの取り込み量に明白な差がみられる(表1)。
- 本法では、従来法で2段階で行っていた水素回収活性の誘導と水素の吸収を同時に行うので操作が簡単になる。また、従来法が10日間必要とした判定期間を3日間に短縮できる。
- 測定は、液体シンチレーションカウンターを用いて連続的に行うため、多数の試料を測定できる。
|
成果の活用面・留意点 |
- RI使用施設が必要である。
- 根粒の水素回収活性の判定には組織を磨砕したものを用いる。
- 水素細菌のスクリーニングにも応用できる。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
図表4 |
|
カテゴリ |
大豆
|