タイトル |
コムギ(Triticum aestivum L.)のモチ変異体の作出方法 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1995~1995 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1995 |
要約 |
胚乳澱粉中アミロース合成を支配するwaxy(Wx)遺伝子産物であるWxタンパク質の二次元電気泳動による解析の結果、部分的モチ変異体の検出が可能となり、それらの利用によりモチのコムギが作出可能なことが判明した。
|
背景・ねらい |
澱粉は、穀類あるいはイモ類の収穫部位の70%以上をしめる豊富な天然資源であり、食品あるいは工業原料として幅広く利用されている。澱粉は通常、直鎖状の多糖(アミロース)とさらに分枝構造を持つ多糖(アミロペクチン)から構成される。しかし、イネやトウモロコシなどでは、アミロースを欠いたモチ系統が存在し、特にモチトウモロコシはプレミアムが付き、付加価値が高い。しかし、世界の主要作物の一つである6倍体コムギ(Triticum aestivum L.)には、モチ系統が存在せず、その作出が望まれていた。そこでアミロース合成をつかさどるwaxy(Wx)遺伝子の発現をその産物であるWxタンパグ質に注目して解析し、モチコムギの作出を試みた。
|
成果の内容・特徴 |
- Wx遺伝子の産物であり、Wxタンパク質は二次元電気泳動(2D-PAGE)により、分子量の異なる2つのアイソフォーム群に分離することができる(図1a)。
- 2D-PAGEで分離された2つのアイソフォームはコムギ品種 Chinese Springナリソミック―テトラソミック系統を用いた遺伝分析より、A、B、Dゲノム由来の3つのWx遺伝子(Wx-A1、Wx-B1、Wx-D1)にコードされる分子量あるいは等電点の異なる3つのタンパク質(Wx-A1、Wx-Bl、Wx-D1)に分離される(図1b)。
- Wxタンパク質の2D-PAGEによる解析法により、コムギに存在する3Wx遺伝子の発現解析が可能になり、3遺伝子のうち、1ないし2遺伝子の発現を欠く変異体(部分的モチ変異体:partial waxy mutant)が確認できる(現在までにType2、Type2、Type3、Type4、Type7の4種類が発見されている、図2)。
- 確認された部分的モチ変異体のうち、W-A1、Wx-B1両タンパク質を欠くType7とWx-D1タンパク質を欠くType4を交配したところ、F2種子において、Wxタンパク質を全く欠き、ヨウ素ヨウ化カリュウム溶液で赤褐色に染色される胚乳澱粉(モチ澱粉)を持つものが、予想どおり1/64の比率で分離した(表1)。このことから、部分的モチ変異体を組み合わせWxタンパク質を欠失させることにより、モチコムギが作出できる。
|
成果の活用面・留意点 |
- 2D-PAGEの二次元目(SDS-PAGE)においては、分離ゲルのアクリルアミドとBISアクリルアミドの比率を通常の30:0.8から30:0.135に変える。
- コムギのWx遺伝子の分子レベルでの発現解析およびクローニングに利用できる。
- モチ形質を持った新たな品種、系統の育成に利用できる。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
カテゴリ |
とうもろこし
品種
|