タイトル |
機能性ゲノムライブラリーを用いたいもち病抵抗性遺伝子のクローニング |
担当機関 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1998~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
我々が開発した大容量バイナリーベクターpBIGRZを用いた機能性ゲノムライブラリーとイネのBAC(バクテリア人工染色体)ライブラリーとからなる植物遺伝子の効率的なポジショナルクローニングのシステムが完成した。これを使うことによりイネのいもち病抵抗性遺伝子Pi-b単離に成功すると共に、抵抗性遺伝子の系統発生の機構に関する手がかりが得られた。
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背景・ねらい |
イネを含めた植物一般においてQTL(Quantitative Trait Loci)をも含めた全ての遺伝子に適用可能で、一般の研究室で使いやすいポジショナルクローニングのための系の開発と確立を図る。 そのモデルとして、経済的な重要性からこれまでに我が国で豊富な情報と材料が蓄積されてきたイネのいもち病抵抗性遺伝子の単離をとりあげ、単離された遺伝子とその周辺を解析し、植物における抵抗性の発現機構、及び抵抗性遺伝子の系統発生の仕組みの解明を試みる。
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成果の内容・特徴 |
- いもち病抵抗性遺伝子Pi-b 領域をカバーするBACクローン145G7のHindIIIマップが完成し、これを基にPi-b を持つ抵抗性品種BL-1から作製された機能性ゲノムライブラリーからも、同領域をカバーするcontigを完成することができた(図1)。
- contigを構成する各クローンを感受性品種・日本晴に形質転換していもち菌の感染実験を行った結果、contigのほぼ中心に位置するクローン、N7-1だけが抵抗性を相補した。隣接・部分重複する相補活性のないクローンとの比較から、遺伝子はN7-1にだけ含まれるセントロメア側約10Kbの領域に、少なくともその一部を持つことが示され、この領域のシーケンシングの結果約7Kbにまたがる、ORF(Open Reading Frame)が確認された(図1)。これと約4.5kbのcDNAの分析とから抵抗性遺伝子に特徴的なNBS(Nucleotide Binding Site)とLRR(Leucine Rich Repeat)のモチーフが見出され、これがPi-b 遺伝子の本体と考えられた。その5'側には隣接して、約31kbに分散して存在するpseudogene、Pi-b' が見出された。感受性のjaponica でも対応するホモログPi-b"が得られた。
- Pi-b を持たないシモキタ(japonica )とPi-b を持つBL-1とで同領域180KbのHind IIIマップを比較することにより、Pi-b を中心とした約90Kbの領域では特異的にゲノムの変動が起きていることが明らかになった(図1)。この領域の解析により抵抗性遺伝子の系統的な発生機構解明の鍵が得られるものと期待される。
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成果の活用面・留意点 |
- BACライブラリー及び、大容量バイナリーベクターによる機能性ゲノムライブラリーを利用した遺伝子単離のシステムは、一般の植物・遺伝子に於いて広く応用可能であり、AFLPシステムと組み合わせれば、精密な遺伝子地図がない作物や近傍にRFLPマーカーが無い遺伝子でもポジショナルクローニングが可能となる。
- 真性抵抗性遺伝子Pi-b 単独では、これまでに抵抗性の崩壊が1年足らずで起きていることから、育種面での実用性は乏しいので、これに対応するいもち病の非病原性遺伝子avrPib を単離して、適当なプロモーターと共に導入する必要がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
育種
いもち病
機能性
抵抗性
抵抗性遺伝子
抵抗性品種
品種
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