タイトル |
ブタ体外生産胚盤胞からの仔ブタの生産法 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1999~2001 |
研究担当者 |
永井卓
岩元正樹
菊地和弘
金子浩之
秋田富士
大西彰
野口純子
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発行年度 |
2001 |
要約 |
ブタ体外成熟・受精卵子の体外での培養法を改良した。この手法で高品質の体外生産胚盤胞を得た。これらを受胚雌ブタに移植したところ、効率よく妊娠・出産した。
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キーワード |
ブタ、卵子、体外成熟、体外受精、体外培養、胚盤胞、胚移植
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背景・ねらい |
クローンや形質転換個体の作出には、通常体内由来成熟卵子あるいは受精卵子が使われる。しかし、生体から採取されるので、労力ならびに経費が問題となっている。また、成功例が報告されているが、その効率は低い。受胚雌ブタへの胚移植前の段階で、胚の生存性や発生能あるいは遺伝子導入の成否を評価することが求められている。しかしながら、ブタ胚の体外培養法は未完成であり、体外成熟・受精卵子を2日間ほど2-4細胞期まで体外で培養し胚移植すると仔ブタが生まれるものの、6日間培養して胚盤胞を移植しても産仔が得られない。体外生産胚の体外培養法を改良し、胚盤胞の移植により仔ブタを生産する手法を確立し、体外成熟卵子を用いたクローンや形質転換個体の作出法を効率化することを目的とする。
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成果の内容・特徴 |
栄養源としてブドウ糖を含むオリジナル組成のNCSU-37培養液(IVC-Glu)と、新たにブドウ糖の替わりにピルビン酸ならびに乳酸を含む同培養液(IVC-PyrLac)を開発した。体外受精後0から2日をIVC-PyrLacにて、引き続き2から6日目をIVC-Gluで組み合わせて使用した場合、胚盤胞発生率ならびに胚盤胞を構成する細胞数が有意に高くなった(図1)。 発情期の雌ブタ卵管より卵管上皮塊を採取し、IVC-PyrLacにて2日間培養した。この培養液を凍結保存し、使用時に新鮮培養液を等量加え条件付け培養液(IVC-PyrLac/CM)として使用した。受精卵子をこの液にて2日間培養しその後IVC-Gluにて4日間培養した場合、胚盤胞を構成する細胞数が有意に高くなった(図2)。 この方法で5日あるいは6日目まで体外培養した場合、胚盤胞(拡張期、拡張ならびにその他の胚盤胞)への発生率は同程度であるが、6日目では多くのものが拡張胚盤胞へと進行し、その細胞数は約80となり生体由来胚盤胞に匹敵する品質を備えていた(図3)。これらの胚盤胞では将来胚へと発生する内部細胞塊が発達していた(図4)。 5日目の拡張期胚盤胞ならびに6日目の拡張胚盤胞を、それぞれ1頭ならびに2頭の発情同期化した受胚雌ブタに1頭あたり50個移植したところ、すべてが妊娠しそれぞれ8頭ならびに計11頭の健康な仔ブタが生まれた。
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成果の活用面・留意点 |
- 確立された体外培養法は体外生産胚のみならず、生体由来胚にも適用可能である。
- 受精卵子のみならず、クローン胚ならびに形質転換胚を胚盤胞まで効率的に体外培養することが可能となる。その期間に生存性の判定や細胞のバイオプシーが可能となる。
- 胚生産から移植、個体生産のコストが削減可能である。
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カテゴリ |
コスト
豚
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