昆虫培養細胞株の短期間樹立技術

タイトル 昆虫培養細胞株の短期間樹立技術
担当機関 昆虫新素材開発研究グループ
研究期間 2001~2005
研究担当者 羽賀篤信
今西重雄
秋月岳
谷合幹代子
発行年度 2001
要約 鱗翅目及び鞘翅目昆虫の初代細胞培養用培地としてMX培地、さらに双翅目昆虫用としてSX培地を新たに開発し、これらの培地と化学修飾キチンとして新たに開発した細胞外マトリックスとを併用することにより培養基質へ組織の付着と細胞の増殖を促し、株の樹立迄の期間を大きく短縮することに成功した。
キーワード 昆虫、培養細胞株、培地、細胞外マトリックス、初代培養、増殖、キチン
背景・ねらい 培養細胞系を利用した研究は近年著しい早さで進み、外来遺伝子発現系への利用、医学・生体反応の解析系としての基礎応用研究が発展してきた。培養細胞株の樹立は齧歯類等の哺乳動物系では比較的容易であるが、百万種を越えるとも言われる昆虫では個々の種別に適した培地は少なく、しかも培地は継代培養用を主目的とし、細胞株樹立までの初代培養用に適した培地はなかった。そのため株化までの初代培養期間の短縮化をねらう目的で画期的な培地の開発が期待されていた。また、培養基質も哺乳動物細胞用の細胞外マトリックスが昆虫細胞用に併用されてきたこともあり、昆虫の細胞生理からみた新たな細胞基質の開発も望まれていた。今回我々はこれらの要望を満たした昆虫の初代培養技術を開発し、初代培養の期間を大きく短縮することができた。
成果の内容・特徴
  • 鱗翅目、鞘翅目昆虫の初代培養用に適したMX培地を新たに開発した。牛胎児血清を30%含有するMX30培地は初代培養開始直後の細胞の増殖に最適であり、増殖に応じてMX20培地に移し替える。双翅目、膜翅目昆虫の初代培養用にはSX培地を開発した。取り扱いはMX培地と同様である。これら培地は血球系細胞、卵巣やこれ迄増殖が困難な脂肪体や精巣の各組織由来の細胞の増殖を促進し、従来の培地よりも飛躍的な改善が認められた。
  • 初代培養は組織を数断片に切断後コラゲナーゼ処理し、切片からの細胞の遊出を促進する方法が最も短期間に初代培養を経過できた。
  • 昆虫の初代培養における細胞外マトリックスにはゲラチン、ポリLリジンやフィブロネクチンが増殖に有効であったが、長期間の培養にはなお不十分であった。しかしカイコ蛹殻から抽出したキチンに化学修飾した硫酸化キトサン、Nトリメチル化キトサンの誘導体や無修飾の水溶性キチンは対培地含有量の極微低濃度でも細胞増殖促進作用が認められ、カイコ個体から摘出した血球系細胞や卵巣組織及び精巣組織由来の細胞の増殖に促進効果があった。
  • 新たに開発した培地と細胞外マトリックスを組合わせた培養方法により、鱗翅目昆虫ではカイコ(血球系、脂肪体、卵巣、精巣、雄胚、雌胚)、クワコ(脂肪体)、エビガラスズメ(脂肪体)、エリサン(脂肪体)、鞘翅目昆虫ではドウガネブイブイ(脂肪体)、半翅目昆虫ではチャバネアオカメムシ(胚)、双翅目昆虫ではカ(胚)の初代培養を行い、その内数系統は継代培養に成功している。これらはこれ迄樹立されていない新規な系統である。
  • 小規模培養では初代培養期間を従来よりもかなり短縮できた。
  • 成果の活用面・留意点
    1. 昆虫培養細胞株の数十系統を生物研ジーンバンクに登録した。来年度も数系統の登録を予定している。これら細胞株は生物研ジーンバンクを通して共同研究等に提供が可能となった。
    2. 本培養技術を用いて、これ迄困難とされてきた昆虫培養細胞系の樹立が可能性になるものと思われ、新たな昆虫新産業の創設に向けた基盤的技術になると考えられる。
    具体的データ
    カテゴリ カイコ カメムシ

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