イネの種子で外来遺伝子産物をタンパク顆粒に輸送させる技術の開発

タイトル イネの種子で外来遺伝子産物をタンパク顆粒に輸送させる技術の開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 高岩文雄
川越靖
発行年度 2001
要約 イネの種子で機能性タンパク質等を高レベルに発現させるための汎用的技術の開発を目指して、貯蔵タンパク質の細胞内輸送に関わる分子機構の解明に取り組んでいる。これまでに、イネ種子貯蔵タンパク質グロブリンのアミノ酸配列中に球状タンパク顆粒PB-Iへの輸送を促進する配列を発見した。
キーワード 種子貯蔵タンパク質、タンパク質輸送、タンパク顆粒、グロブリン
背景・ねらい イネに導入する外来遺伝子を種子で高レベルに転写させる方法は既に確立している。しかし、導入した遺伝子産物の完熟種子での最終的な蓄積量は、翻訳産物の細胞内蓄積部位とタンパク質の特性に大きく依存することが近年の研究で明らかとなってきた。本研究は種子貯蔵タンパク質の細胞内輸送やタンパク顆粒の生成機構等を明らかにすることによって、機能性タンパク質やペプチドをイネの可食部で高度に発現させる汎用的な技術の開発を目指している。
成果の内容・特徴
  • グロブリン(イネ種子貯蔵タンパク質)は、主要な貯蔵タンパク質のグルテリンと同様に、液胞由来のタンパク顆粒(PB-II)に輸送される。グロブリンの細胞内輸送の分子機構を解析するために、グロブリンの全長又は一部を緑色蛍光タンパク質(GFP)に付加し、グロブリン遺伝子のプロモーターで胚乳特異的に発現させる形質転換イネを作出した。それぞれのタンパク質の発現量をウェスターンブロット法で(図1)、また細胞内蓄積部位を共焦点レーザー顕微鏡で観察した(図2)。シグナルペプチドをGFPのN末端に付加したタンパク質(spGFP)と、spGFPにグロブリンの全長(G21-Y186)を付加したspGFP-Glbでは発現量に顕著な違いはなかった。一方、シグナルペプチドを付加しないGFPは細胞質に局在したが、完熟種子での蓄積量は極めて低かった(図1)。これらの結果から、外来遺伝子産物をイネの胚乳で高発現させるためには、タンパク質のN末端にシグナルペプチドを付加することが必要であることが判明した。
  • 共焦点レーザー顕微鏡による観察で、spGFPは予想通り細胞壁での蓄積が確認された(図2左)。これに対し、グロブリンのN末端ドメイン(G21-Q111)をspGFPに付加したspGFP-GlbNは、小胞体由来のPB-Iと呼ばれる球状タンパク顆粒に輸送された(図2右)。ちなみにPB-Iでは貯蔵タンパク質のプロラミンが蓄積する。
  • spGFP-GlbNがPB-Iに輸送される分子機構を解明するために、この領域を更に細かく断片化して、形質転換イネを作出し、細胞内蓄積部位を観察した。この結果、72番目のロイシンから86番目のセリンの15アミノ酸残基(LGLRMQCCQQLQDVS)がPB-Iでの蓄積に必要であることが判明した。この配列には2つの連続するシステイン残基があり、PB-Iに内在するプロラミンタンパク質とジスルフィド結合で会合する可能性が予想された。これらのシステイン残基を含む4つのアミノ酸残基をアラニンで置換した配列(LGLAMQAAQQAQDVS)では、PB-Iでの蓄積が観察されなかった。
  • 成果の活用面・留意点
    1. イネ胚乳での外来タンパク質の発現は、タンパク顆粒又は細胞壁への輸送・蓄積が有効であることが判明した。タンパク質の分別輸送に関わる分子機構の解明とその利用によって、生理機能性や新規加工特性を付加した形質転換米の作出が期待される。
    2. 同定した15アミノ酸残基を機能性タンパク質等に付加してイネの種子で発現させれば、プロラミンが集積するPB-Iで安定した蓄積が期待できる。
    カテゴリ 加工特性 機能性 輸送

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