2β水酸化酵素導入による草型制御技術の開発

タイトル 2β水酸化酵素導入による草型制御技術の開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2000~2002
研究担当者 萱野暁明
古賀保徳
坂井美穂
坂本知昭
小林正智
松岡信
大竹祐子
田中宥司
田部井豊
発行年度 2001
要約 単離したジベレリン(GA)代謝系の2β水酸化酵素遺伝子を茎葉で強く発現するプロモーター下で発現させた形質転換イネの特性調査を実施し、閉鎖系安全性評価をクリアした。形質転換イネの作出において、基本特許をできるだけ回避した方策を検討した。
キーワード 2β水酸化酵素、イネ育種素材、矮化、形質転換、特許回避
背景・ねらい 作物の草型を自在に制御することは育種技術の最大目標の1つになっている。遺伝子導入法を利用することで、ジベレリン代謝系の遺伝子発現を制御することにより、農業上重要な形質の一つである矮性形質を作物に付与する技術の開発を目標とする。
遺伝子組換え作物の作出においては基本特許の多くが海外で取得されているために国内で遺伝子組換え作物を開発するには障壁が多く存在する。そこで、茎葉で強く働くD18プロモーター、GA2β水酸化酵素遺伝子および新規形質転換法などのオリジナルな遺伝子や技術を用いることにより、基本特許をできる限り回避するための戦略を構築し、育種素材として利用可能なイネを作出する。
成果の内容・特徴
  • 昨年度、アクチン(構成的)プロモーター下で2β水酸化酵素を発現させた形質転換イネでは導入して得られた形質転換体は矮化した形態をしめしたが、種子の稔実がみとめられなかった。そこでD18プロモター下で発現させると稔実を回復することが可能であった(図1)。
  • 得られた2β水酸化酵素を導入したT1分離世代形質転換イネの特性評価を閉鎖系温室において実施した。形質転換イネ(どんとこい)は対照に比べ約50%程度の草丈となり、明らかな矮性を示した(図2)。また、D18プロモーターを用いることで稔実の回復は認められたが、対照のどんとこいに比べ粒数の減少が認められた(図3)。
  • 上記の形質転換イネについて閉鎖系温室での安全性評価を完了した。形態的変化、生殖及び稔性特性、有害物質生産能、アグロバクテリウムの残存性などを調査し、文部科学省の安全性審査承認を受け、非閉鎖系温室での実験を可能とした。
  • 形質転換イネを開発するにあたり障害となる特許について調査し、それらを回避する戦略をたてた。表1には遺伝子特許と形質転換法特許について既存の特許障害となる技術をまず示し、矢印で回避する方策を示した。実際に改良したベクターを用いて、現在コシヒカリに導入中である。
  • 成果の活用面・留意点
    1. 粒数減少については用いたD18プロモーターが花器でも少し発現していることが原因と考えられ、今後茎葉特異的プロモーターを用いることで回避できるものと考えている。
    2. ここで得られた矮性の形質は優性に遺伝することから、ハイブリッドの育種母材としての利用場面も考えていきたい。
    3. 今後非閉鎖系温室における安全性評価も平行して推進する。
    4. イネ以外の作物や果樹などに2β水酸化酵素遺伝子導入を応用することで矮化した新品種の開発が可能と考えられる。
    カテゴリ 育種 新品種

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