タイトル |
ブタ由来のP450遺伝子導入イネの除草剤耐性 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2000~2004 |
研究担当者 |
広瀬咲子
小沢憲二郎
小島美咲
川東広幸
大川安信
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発行年度 |
2001 |
要約 |
ブタ由来の3種類のチトクロームP450遺伝子を日本晴イネに導入し、形質転換体を作出した。その中でブタチトクロームP450-2C49(CYP2C49)を導入した形質転換体は、様々な種類の除草剤を含む培地中での発芽テストで発芽し、正常な生育を示した。このことから、ブタCYP2C49形質転換イネはこれらの除草剤に対して耐性を示すことが明らかとなった。
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キーワード |
P450遺伝子、除草剤耐性、組換え体、ブタ、CYP2C49
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背景・ねらい |
哺乳動物の薬物代謝型チトクロームP450モノオキシゲナーゼ(CYP)は肝臓に存在し、様々な薬剤を代謝することで知られている。この動物由来のP450酵素は高い代謝活性を持ち、植物に導入することにより植物の薬物代謝能力を飛躍的に向上する事ができる。このような形質転換植物は、農薬の使用量や残存量を低減することができ、環境負荷化学物質軽減作物としての利用が期待される。 今回は畜産動物であるブタ由来のP450遺伝子を新たに日本晴に導入し、形質転換イネの解析、評価を行う。
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成果の内容・特徴 |
ブタ由来のCYP1A1、CYP2B22、CYP2C49を、アグロバクテリウム法により日本晴イネに導入し(図1)、ハイグロマイシン耐性選抜により形質転換体を選抜した。得られた再分化個体はPCR法により導入遺伝子を確認後、閉鎖系温室で栽培し、それぞれの形質転換体20個体から種子を得た。 ヒトP450分子種をイーストで発現させ、そのミクロソーム画分での代謝分析の結果からヒトP450分子種のホモログであるブタP450が代謝すると考えられる除草剤が予想された。それぞれの形質転換体の種子を用いこれらの除草剤を含む培地上で発芽テストを行い形質転換体の除草剤耐性を評価した(図2)。 ブタCYP1A1形質転換体はPCRで遺伝子の導入が確認されたが、このものは導入タンパク質が合成されておらず、また除草剤を含む培地中での発芽試験で耐性を示さなかった。 ブタCYP2B22はアセトアニリド系の除草剤に対して耐性を示したが、その程度はホモログであるヒトCYP2B6形質転換体より弱いことが判明した。 新規に取得されたCYP2C49は、ホモログであるヒトCYP2C19よりも広い基質特異性を有し、アセトクロールやイソキサベンといったヒトCYP2C19が代謝できない除草剤に対しても発芽試験で耐性を示し生育した。ブタCYP2C49遺伝子を導入した形質転換体はこのように様々な作用機構の異なる除草剤に対して幅広い耐性を示すことが明らかとなった(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- ブタCYP2C49は幅広い基質特異性を示すことから環境浄化植物としての利用に適していると考えられる。この場合には適切なプロモーターを用いて発現量を上げる必要がある。
- ブタCYP2C49については酵母で発現させ、ミクロソーム画分での除草剤の代謝活性を酵素学的に詳細に調査する必要がある。
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カテゴリ |
病害虫
除草剤
農薬
豚
薬剤
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