異種間移植によるブタ原始卵胞の発育と卵母細胞の成熟

タイトル 異種間移植によるブタ原始卵胞の発育と卵母細胞の成熟
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 菊池和弘
金子浩之
野口純子
発行年度 2002
要約 原始卵胞が構成卵胞の96%を占めるブタ新生仔卵巣の組織片をヌードマウスに移植し、ホルモン剤投与後、その発育および卵母細胞への成熟を解析した。その結果、多数の胞状卵胞の発育が観察され、さらに採取された卵母細胞は成熟し受精する可能性があることが示された。
キーワード ブタ、ヌードマウス、異種間移植、原始卵胞、卵胞発育、卵母細胞成熟
背景・ねらい 原始卵胞は最も未成熟な卵胞である。完全に成熟した卵胞(胞状卵胞)の出現が生殖可能年齢にほぼ限定されるのに対し、原始卵胞は個体の年齢に左右されず存在し、その数は膨大である。そのため原始卵胞は雌側の遺伝情報の保存対象として最適と考えられるが、原始卵胞に含まれる卵母細胞は未成熟なまま99%以上が消滅する。従って、遺伝資源の保存対象あるいは生殖工学の研究対象として、原始卵胞を新たに利用するためには、原始卵胞を成熟させ、そこから十分に成熟した卵母細胞を採取する手法の開発が必要不可欠である。そこで、ブタをモデルとして、卵巣組織片をヌードマウスに移植し、マウス体内で未成熟な卵母細胞を成熟・発育させる異種間の生体内移植法を開発することを目的とした。
成果の内容・特徴
  1. ドナーとして用いた生後20日齢のブタ卵巣中の卵胞構成は96%が原始卵胞、残りのほとんどがやや成熟の進んだ1次卵胞であった(図1A)。ヌードマウスに卵巣移植後55~65日経過した時点で、膣スメア像が発情期像を示し、胞状卵胞の出現が初めて確認された(図1B)。さらに、60日経過後にホルモン剤として妊馬血清性性腺刺激ホルモン(eCG)を5IU投与すると、胞状卵胞の著しい発育が観察された(図1C)。
  2. 発情期スメア像の確認から60日後にeCGを投与するプロトコールによって、7匹のヌードマウスから574個のブタ卵母細胞を採取した(図1D)。そのうちフルサイズ(直径115μm以上)に達した卵母細胞は211個で、全回収卵母細胞数の37%を占めた。
  3. 回収卵母細胞はすべて減数分裂初期(GV期)で停止していた(図2A)。卵母細胞の成熟能は42時間の体外成熟培養後における減数分裂の再開と定義した。98個の卵母細胞で減数分裂の再開が観察された(図2B)。
  4. さらに減数分裂を再開した17個の卵母細胞に電気刺激を加え単為発生を促すと、10個の卵母細胞に受精の前提条件となる雌性前核の形成が観察された(図2C)。
成果の活用面・留意点
  1. 適切な移植系および体外成熟系の組み合わせによって、ブタの原始卵胞の成熟が可能であることが示された。この手法は、種々の大型哺乳動物に適応可能である。
  2. 原始卵胞の超低温保存と本法を組み合わせれば、新たな雌側の遺伝情報保存・利用手法となる。
カテゴリ 遺伝資源

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