硝酸鉛によるコレステロール生合成酵素遺伝子の発現変動

タイトル 硝酸鉛によるコレステロール生合成酵素遺伝子の発現変動
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2002
研究担当者 〔根本清光
出川雅邦(静岡県大
小島美咲
薬)〕
発行年度 2002
要約 ラットに硝酸鉛を投与すると肝臓のコレステロール生合成酵素およびその転写因子であるSREBP-2遺伝子の発現上昇が認められ、血中コレステロール濃度および肝重量が増加した。肝細胞増殖(重量増加)時のコレステロール生合成酵素遺伝子の発現変動は、従来知られているような血中コレステロール量によるフィードバック制御に依存しないことが明らかになった。
キーワード 硝酸鉛、コレステロール生合成酵素、SREBP-2、血中コレステロール濃度、遺伝子発現、ラット、肝
背景・ねらい コレステロール生合成酵素の発現制御機構として、血中コレステロール濃度によるフィードバック機構が知られているが、細胞増殖時におけるコレステロール生合成酵素の発現制御に関する解析はほとんど行われていない。
そこで、ラットに対して肝細胞増殖作用や肝臓および血中コレステロール量を増加させる作用があることが知られている硝酸鉛(LN)を用い、ラットに投与した場合の肝コレステロール生合成酵素[HMG-CoA reductase(HMGR), squalene synthase(SQS), lanosterol 14α-demethylase(CYP51)]および肝細胞増殖因子TNF-αの遺伝子発現を real time RT-PCR法により経時的に解析した。さらに、コレステロール生合成酵素に共通の転写因子として知られるsterol regulatory element binding proteins(SREBP)の遺伝子発現への影響について併せて解析した。

コレステロール生合成経路の概略と関与する酵素
成果の内容・特徴
  1. 血中の総コレステロール量は、LN投与12~48時間後に対照群の1.5倍に上昇した(図1)。
  2. LN投与3時間後より、肝細胞増殖因子TNF-αのmRNA量の増加が認められ、48時間後より肝重量が増加した(図2)。
  3. LN投与3時間後にコレステロール生合成の律速酵素であるHMGRの遺伝子発現量が対照群に比べ5倍に上昇した(図3)。また、HMGRの下流で働くコレステロール生合成酵素であるSQSおよびCYP51の遺伝子発現は投与12時間後に2~3倍に上昇した(図3)。
  4. コレステロール生合成系酵素の各遺伝子発現に共通に関わっているとされる転写因子SREBPのうち、SREBP-2分子種のみの遺伝子発現が、LN投与により約2倍(12時間後)に上昇した。この結果は、LNによるコレステロール生合成酵素遺伝子の発現上昇にはSREBP-2が関与していることを示唆している(図4)。
以上、LNで誘発されるラット肝細胞増殖時には、コレステロール生合成酵素遺伝子の発現上昇が起こり、血中コレステロール濃度が増加することが明らかになった。また、血中コレステロール濃度はLN投与後12時間までは変化しないことより、LNによるこれら酵素遺伝子の発現誘導はこれまでに報告されてきたコレステロールによるフィードバック機構とは異なった機構により惹起されるものと考えられる。TNF-αがLNによるコレステロール生合成酵素遺伝子の発現誘導に関わっているか否かは今後の検討課題である。
成果の活用面・留意点 硝酸鉛による高コレステロール症誘発動物は、コレステロール生合成酵素の発現制御の分子機構を解析するための新たな実験モデルになると期待される。また、このような研究から得られた成果は、食肉などのコレステロール含量をコントロールする新たな手法の開発に繋がるものと期待される。
図表1 226329-1.jpg
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