カイコ幼虫皮膚が透明になる油蚕遺伝子ogの同定

タイトル カイコ幼虫皮膚が透明になる油蚕遺伝子ogの同定
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2003
研究担当者 河本夏雄
行弘研司
発行年度 2002
要約 キサンチン脱水素酵素(XDH)活性欠損のために幼虫皮膚が透明になるog突然変異遺伝子が、XDH活性に必要なモリブデン補酵素合成に関わる遺伝子であることを、連鎖解析や突然変異体での遺伝子構造解析で明らかにした。
キーワード 尿酸、キサンチン脱水素酵素、アルデヒド酸化酵素、モリブデン補酵素
背景・ねらい 尿酸は多くの生物で抗酸化物質として働いており、また、ヒトで過剰に蓄積すると痛風を引き起こすなど、様々な生命現象に関与している。カイコにおいては幼虫の真皮細胞に尿酸結晶が大量に蓄積しており、これが光を反射するために皮膚が不透明になる。カイコの突然変異の中には、尿酸の合成や蓄積ができないものが20遺伝子座以上見つかっており、皮膚が油紙のように透けて見えることから油蚕(あぶらこ)と総称されている。尿酸合成を行なうのはキサンチン脱水素酵素(XDH)であり、油蚕突然変異のうちogとoqとについてはXDH活性の欠損が原因であることがわかっている。oqはXDHの構造遺伝子であることがすでに判明しているが、ogについては遺伝子がクローニングされていない。一方、突然変異遺伝子をクローニングすることは、遺伝地図作製などゲノム解析においても意義が大きい。本研究では、油蚕遺伝子ogのクローニングと遺伝子構造解析を行なった。
成果の内容・特徴
  1. 幼虫の組織粗抽出液を非変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動して活性染色し、og突然変異体ではXDH以外にアルデヒド酸化酵素(AO)活性も欠損していることを明らかにした(図1)。
  2. XDH・AO両酵素はともにモリブデン補酵素(MoCo)を必要とすることから、MoCo合成に関わるMoCo sulfurase遺伝子をRT-PCRでカイコ脂肪体から単離し塩基配列を解析した(図2)。また、ゲノムクローンも単離し解析した。
  3. og突然変異体と正常個体との交配で得られたF2集団中の突然変異個体(297個体)において、カイコMoCo sulfurase遺伝子のDNA多型(PCR-RFLP)を解析し、MoCo sulfurase遺伝子とog遺伝子との間の組換え価が0であることを示した(図3)。
  4. og、og(k)、og(t)各突然変異体でのカイコMoCo sulfurase遺伝子のcDNAとゲノムクローンとをPCRで単離し塩基配列を解析した(図4)。その結果、og(k)においては、2つのエクソンとその間のイントロンを含む998bpの領域が欠失しており、欠失領域の下流のフレームシフトによりストップコドンが生じていることがわかった。また、og(t)においてはエクソン内に551bpの挿入配列があり、フレームシフトやORFの欠失が起きていた。塩基配列解析などから、この挿入配列が新規トランスポゾンであることが判明し、これをOrgandyと名付けた。
  5. 上記の酵素活性欠損と組換え価、突然変異体での遺伝子構造異常があることから、og遺伝子はMoCo sulfurase遺伝子であることが明らかになった。
成果の活用面・留意点
  1. 突然変異遺伝子に基づくいわゆる古典的遺伝地図とDNAマーカーを用いた分子遺伝地図とを統合するうえでの基点となる。
  2. AOがオス触角でのフェロモン受容に関わっている可能性が指摘されていることから、この関連についての研究材料としてog突然変異体を用いることができる。
カテゴリ カイコ DNAマーカー フェロモン

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