ショウジョウバエの脆弱X症候群疾患モデルの開発

タイトル ショウジョウバエの脆弱X症候群疾患モデルの開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2002~2004
研究担当者 井上俊介
塩見春彦
西ノ首いづみ
石田直理雄
霜田政美
発行年度 2002
要約 昆虫の遺伝子組換え技術を利用して、ヒトの精神遅滞症のひとつである脆弱X症候群の疾患モデルを開発した。ショウジョウバエで病気の原因遺伝子FMR1を破壊したところ、24時間の活動リズムに異常が生じた。このことからFMR1が生物リズムの維持に重要な役割をもっていることが明らかになった。
キーワード 昆虫、遺伝子組換え、脆弱X症候群、精神遅滞、睡眠障害、FMR1、疾患モデル
背景・ねらい 生物は体内時計(生物時計)の働きにより、生理状態や活動などの1日の周期性が保たれ、昼夜の環境変化にうまく適応している。我々はこの体内時計の分子機構を解明するために、遺伝子組換え昆虫(ショウジョウバエ)を用いて研究を進めてきた。ヒトの遺伝病である脆弱X症候群では、精神遅滞や自閉症様症状のほかに睡眠障害を伴うことから、病気の原因遺伝子FMR1と体内時計との関わりについて検証した。
成果の内容・特徴
  1. P-エレメントと呼ばれる動く遺伝子を人為的に操作して、FMR1遺伝子を破壊したノックアウトハエ(FMR1欠失変異体)を作成した。
  2. このFMR1欠失変異体の行動を詳細に調べたところ、成虫の活動リズムに異常が見いだされた。遺伝子の破壊されたハエでは、約24時間の活動周期が失われ、休むことなく活動を継続した(図1中央)。また欠失変異体にFMR1遺伝子を再導入したところ、活動の周期性が回復した(図1右,遺伝子治療)。
  3. FMR1欠失変異体の頭部(脳)の時計遺伝子を分析したところ、ピリオドやタイムレスといったタンパク質の周期的変動に異常が認められた。
  4. 以上の結果から、FMR1遺伝子が正常な活動リズム形成に不可欠な役割を果たしており、体内時計に関与する遺伝子であることが示された(図2)。
  5. ヒトの脆弱X症候群患者では睡眠障害が症状の一つであるが、今回のショウジョウバエをモデルとした研究から、この病気の発症に体内時計が深く関わっていることが明らかになった。
成果の活用面・留意点
  1. ショウジョウバエは高度な遺伝学的・分子生物学的アプローチが可能であることから、この疾患モデルを用いて、睡眠障害の発症などの病態発現にいたる機構の解明が進むものと期待される。
  2. 脆弱X症候群の発症経路の解明が進むことで、この遺伝病に対する理解が深まり、有効な治療法の開発につながるものと考えられる。
  3. FMR1遺伝子を破壊した疾患モデルは、脆弱X症候群の治療薬候補化合物のスクリーニングなどに応用できる可能性がある。
カテゴリ 治療法

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