イネブラシノライド生合成変異体の単離と原因遺伝子の同定

タイトル イネブラシノライド生合成変異体の単離と原因遺伝子の同定
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2000~2002
研究担当者 横田孝雄
菊池尚志
佐藤浩二
森昌樹
杉本和彦
石坂眞澄
大岡久子
野村崇人
廣近洋彦
発行年度 2002
要約 植物ホルモンのブラシノライド生合成変異体をイネより初めて単離した。このイネは極わい性で葉が縮れている。変異体ではブラシノステロイド-6-酸化酵素の触媒する生合成反応が阻害されていることが明らかになった。これは生合成遺伝子でかつチトクロームP450遺伝子であるOsBR6ox遺伝子内の欠失が原因であることが示された。
キーワード ブラシノライド、イネ、チトクロームP450
背景・ねらい 作物の草型制御は農業上最重要課題の一つである。中でもわい化に関与する遺伝子の単離、同定は重要である。双子葉植物では植物ホルモンのジベレリン、ブラシノライドの生合成変異体はわい化することが知られているが、単子葉植物ではジベレリン生合成変異体は単離されているものの、ブラシノライド生合成変異体は単離されていなかった。そこでイネよりブラシノライドの生合成変異体を取得し草型への関与が示せれば、ブラシノライドの生合成を人為的に操作することによりイネをはじめとする単子葉植物の育種に大きな効果が期待できる。
成果の内容・特徴
  1. ブラシノステロイド(BR)により表現型の回復するイネの極わい性変異体brd1(brassinosteroid-dependent 1)を単離した。この変異体は葉鞘が著しく短く、葉身は縮れており(図1)、両形質はブラシノライド(BL)、カスタステロンの添加により回復する(図2)。またこの変異体は分げつが少なく、極まれに出穂するが、出穂した穂は少数の不稔性の極小粒の種子をつけた。
  2. 変異形質の原因を明らかにするためにまず葉鞘の縦断切片の観察を行ったところ、brd1変異体では細胞伸長が阻害されていることが見いだされ、これが短い葉鞘の原因と考えられた。一方葉身の横断切片の観察によりbrd1では機動細胞の肥大が見いだされ、これが葉身の縮れの原因であると考えられた。またbrd1では冠根の数も少なく分枝根の生育も悪かった。更に暗条件で光形態形成の異常が見いだされた。
  3. BLの生合成中間体を定量し野生株と比較した。その結果生合成過程でブラシノステロイド-6-酸化酵素(BR6ox)の触媒するC-6位の酸化が阻害されていることが示された(図3)。
  4. brd1変異体でBR6oxをコードしている遺伝子OsBR6oxの塩基配列を決定したところ0.2kbの欠失が見いだされた(図4)。
  5. 以上のことから、brd1変異体の原因遺伝子はチトクロームP450ファミリーに属するOsBR6oxであることが示され、BRがイネにおいて葉鞘の伸長、葉身の展開、分げつの形成、光形態形成、根の分化、生殖成長など多くの成長過程に関与していることが示された。
成果の活用面・留意点
  1. OsBR6ox遺伝子のサイレンシング或いはアンチセンスRNAによる部分的抑制により、わい性イネの作出が期待できる。同様に単子葉植物についてOsBR6ox相同遺伝子の部分的抑制により、人為的わい化が期待できる。
  2. brd1変異体ではブラシノライドができないので、そのレセプター以降のシグナル伝達系もストップしていることが予想できる。よって本変異体を野生株と比較することにより、単子葉植物のブラシノライドのシグナル伝達機構の解明にも寄与できる。
カテゴリ 育種 わい化

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