| タイトル |
イネ低グルテリン遺伝子Lgc1の単離と作用機構の解明 |
| 担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
| 研究期間 |
2000~2002 |
| 研究担当者 |
高野敏弥
西村実
草場 信
福岡浩之
|
| 発行年度 |
2002 |
| 要約 |
LGC-1は最も主要なイネ種子貯蔵タンパク質グルテリンが減少した突然変異体であり、低タンパク質米として利用可能である。この形質を付与する優性突然変異Lgc1は正常型および欠失を含むグルテリン遺伝子からなる逆方向反復配列であり、この構造から生産される二重鎖RNAによりグルテリン多重遺伝子族の発現を抑制していることが明らかとなった。
|
| キーワード |
イネ、LGC-1、グルテリン、二重鎖RNA、RNAi、有用遺伝子単離
|
| 背景・ねらい |
LGC-1は最も主要なイネ種子貯蔵タンパク質であるグルテリンが減少しプロラミンが増加した突然変異体である。プロラミンは人体でほとんど消化されないことからLGC-1は実用上低タンパク質米として利用可能であり、実際タンパク質摂取量が制限される腎臓病患者への医療米としての利用が始まっている。この低グルテリン形質は単因子優性突然変異Lgc1により制御されている。本研究では有用突然変異であるLgc1の単離とその作用機構の解明を目指した。
|
| 成果の内容・特徴 |
- グルテリン遺伝子をプローブにしてサザン解析をおこなったところ、LGC-1と原品種のニホンマサリの間で多型が見られた。この領域にはGluB4とGluB5という非常に高い相同性を示す二つのグルテリン遺伝子がtail-to-tailの形で逆方向反復配列を形成しており、LGC-1ではこの二つの遺伝子の間に約3.5kbの欠失が起きていることが判明した(図1A)。この欠失はGluB5の第3エクソンから始まっており、GluB4には達していない。
- GluB4と欠失型GluB5を含む断片(GluB4-ΔGluB5)を品種日本晴に形質転換したところ、95%の確率でLgc1の表現型を引き起こすことが分かった(表1)。GluB4のみ(GluB4)を形質転換した場合はLgc1の表現型を示す形質転換体は得られなかった。また欠失型GluB5断片(ΔGluB5)のみの形質転換では半数でLgc1の表現型を示したが、導入遺伝子を1コピーしか持たない形質転換体ではLgc1の表現型を示すものは無かった。
- RT-PCRを用いた解析によりGluB5からGluB4にわたる遺伝子間領域を含む産物が検出された(図1A)。このことはLGC-1ではGluB5からGluB4におよぶreadthrough(読みすごし)が起きていることを示し、この産物はGluB4/GluB5からなる二重鎖RNA領域を持つヘアピンRNAを形成すると考えられる。
- 胚乳RNAのノーザン解析によりRNAi(二重鎖RNAによる遺伝子発現抑制)が起きている証拠とされる21-25ntの二重鎖RNA(siRNA)がLGC-1特異的に検出された(図1B)。
- これらのことから、GluB4とΔGluB5の逆方向反復配列がLgc1の原因遺伝子であり、LGC-1ではその構造から生産される二重鎖RNA領域を含むGluB4/GluB5のヘアピンRNAを介したRNAiによりグルテリン含量が減少していると考えられた。従って、Lgc1は機能獲得型タンパク質を生産するタイプの優性突然変異ではなく、二重鎖RNAを生産する「構造」であると言える。
|
| 成果の活用面・留意点 |
- 本研究はRNAiにより突然変異形質が発現することが示された初めての例である。
|
| カテゴリ |
品種
|