カイコ麻痺ペプチドの生体防御、造血制御への関与

タイトル カイコ麻痺ペプチドの生体防御、造血制御への関与
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 1999~2003
研究担当者 金森保志
神村学
中原雄一
木内信
発行年度 2003
要約 カイコ麻痺ペプチドを幼虫造血器官の培養系に添加したところ、新生血球放出を阻害した。また、放出された新生血球に対しては、付着・伸展反応を誘導した。
キーワード 麻痺ペプチド、カイコ、血球細胞、造血器官、サイトカイン
背景・ねらい 23アミノ酸残基からなるカイコ麻痺ペプチド(BmPP)は鱗翅目に特有のENFペプチド・ファミリーの一員である。これらのペプチドは幼虫に注射した場合の急速な筋肉収縮の誘導、幼虫の発育阻害、培養細胞の増殖促進等のサイトカイン様の活性を示す。BmPPの新たな生理機能を探索する目的で、造血器官の培養系を用いてカイコ幼虫血球の増殖や機能に対する影響を調べた。さらに、BmPPの活性化機構を明らかにするために、幼虫血液中のBmPPの存在形態や前駆体からのプロセッシングを解析した。
成果の内容・特徴
  1. カイコ幼虫の血球細胞は翅原基に付着している造血器官で造られる。この造血器官を摘出し、カイコ幼虫の血清を加えて培養すると、多数の新生血球が放出されたが、同時にBmPPを添加すると濃度依存的に血球放出数が減少した(図1)。無血清培地中でBmPPを添加した場合には放出される新生血球数に変化はなかった。これらの結果から、幼虫体液中に強力な造血因子が含まれること、およびBmPPには造血器官からの新生血球放出を阻害する働きがあることがわかった。
  2. 培養造血器官から放出される新生血球は、形態的にほとんどがプラズマ細胞であり、この新生プラズマ細胞をBmPPで処理すると、付着・伸展反応が急速に誘導され(図2)、BmPPが血球刺激活性を持つことが示された。
  3. 縮重プライマーを用いたRT-PCRおよびRACE法によりBmPPをコードするcDNAをクローニングした。このcDNAの配列から、BmPPはシグナルペプチドを含む131アミノ酸のprepro体として細胞中で合成された後、108アミノ酸からなるpro体となって血中に分泌され、さらに23アミノ酸の成熟ペプチドにプロセッシングされることが示唆された。ウエスタンブロッティングおよびカイコ幼虫に対する麻痺活性アッセイにより、幼虫体液中には15kDaの麻痺ペプチド前駆体が存在し、採血後速やかに麻痺活性を持つ4kDaの成熟ペプチドに変化することが確認された(図3)。

図1

図2

図3
成果の活用面・留意点
  1. 今後は、トランスジェニック・カイコやRNAiなどの分子遺伝学的な解析により、BmPPの生理機能をより詳細に解析する。現在、BmPPを過剰発現するトランスジェニック・カイコを作成中である。
図表1 226366-1.jpg
図表2 226366-2.jpg
図表3 226366-3.jpg
カテゴリ カイコ

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