ナタネミトコンドリアの全ゲノム構造の決定

タイトル ナタネミトコンドリアの全ゲノム構造の決定
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2003~2005
研究担当者 半田裕一
発行年度 2003
要約 ナタネのミトコンドリアの全ゲノム構造を決定した。ナタネミトコンドリアゲノムは、全長221,853bpの環状分子であり、高等植物で最小のミトコンドリアゲノムである。
キーワード ミトコンドリア、ナタネ、ゲノム構造、比較解析
背景・ねらい 植物ミトコンドリアゲノムは、動物等の他の生物種と異なり、ゲノムサイズが10~100倍と大きいこと、植物にのみコードされている遺伝子が存在することが知られており、また、さまざまな反復配列を介した分子内あるいは分子間組換えに起因する複雑なゲノム構造をもっている。遺伝子発現に関しても、シスあるいはトランス型のイントロンスプライシングやRNAエディティングが存在するなど、きわめて特徴的である。ナタネのミトコンドリアゲノムは、約220kbと高等植物の中で最も小さいゲノムサイズをもっていることから、高等植物ミトコンドリアゲノムのモデル系としてそのゲノム解析が望まれていた。
成果の内容・特徴
  1. ナタネミトコンドリアゲノムは、全長221,853bpの環状分子であり、34のミトコンドリアタンパク質遺伝子の他、3rRNA遺伝子、17tRNA遺伝子をコードしていた(図1)。
  2. ナタネのゲノムサイズは、近縁のシロイヌナズナの約60%にすぎないが、遺伝子構成はほぼ同一であり、タンパク質遺伝子の塩基配列は、両植物で平均99%と高い相同性を示した。また、イントロンの数、挿入位置も全く同一であった。
  3. ゲノム全体で、427カ所のエディティングが確認された。この数は、シロイヌナズナとほぼ一致するが、両者で共通する部位は全体の83%にすぎなかった。この値は、両者の塩基配列の高い相同性を考慮するときわめて興味深い。
  4. ゲノムの全領域の比較解析の結果、ゲノムの1/3に当たる領域は、シロイヌナズナと相同性が見られなかった。この非相同領域の80%は、DNA databaseにも相同配列が見つからず、その起源は全く不明である。
  5. ナタネは高等植物中でもっとも小さなミトコンドリアゲノムを持っているが、それにコードされている遺伝子については、他の植物種と大きな差がなく、また、塩基配列自身も高度に保存されている。対照的に、非遺伝子領域の相同性はきわめて低く、植物ミトコンドリアゲノムの進化は、遺伝子領域に見られるきわめて保存的な面と、非遺伝子領域に見られる高い流動性の二面性があることが明らかになった。

図1
成果の活用面・留意点
  1. 高等植物のミトコンドリアゲノム情報のモデルとして、今後の解析に利用できる。
  2. 植物のミトコンドリアに起因する遺伝現象の報告は限られているが、今後、ミトコンドリアの役割を詳細に解明するための基盤情報となる。
図表1 226386-1.jpg
カテゴリ なたね

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