低温耐性と茎葉伸長に関与するカルシウム情報伝達系の解析

タイトル 低温耐性と茎葉伸長に関与するカルシウム情報伝達系の解析
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2000~2004
研究担当者 ABBASI Fida(JIRCASフェロー)
SHARMA Arun(科学技術特別研究員)
小松節子
発行年度 2004
要約 イネ幼苗期の低温耐性と茎葉伸長に関与しているリン酸化能を有するカルレティキュリンを単離した。そのカルシウム情報伝達系において相互作用するタンパク質あるいはカルシウム依存性プロテインキナーゼ遺伝子群は、遺伝子導入により茎葉伸長の制御あるいは低温耐性を獲得できる。
キーワード リン酸化タンパク質、タンパク質間相互作用、低温耐性、茎葉伸長、形質転換イネ
背景・ねらい 植物の草型は、温度・光・乾燥・塩などの各種環境ストレスの影響を受け、生体内ではジベレリンおよびブラシノステロイドを始めとする各種植物ホルモンによる制御機構が存在している。環境ストレス応答系と植物ホルモン情報伝達系の相互作用は、その複雑さからあまり解析されていない。リン酸化能のあるカルシウム結合タンパク質カルレティキュリンが多機能性タンパク質であることを利用し、その情報伝達機構を明らかにすることにより低温耐性機構と茎葉伸長機構の相互作用を解析した。
成果の内容・特徴
  1. イネからカルシウム結合タンパク質カルレティキュリンを単離した。カルレティキュリン遺伝子導入形質転換イネを作出し、カルレティキュリンが低温ストレス応答およびジベレリン情報伝達に関与していることを明らかにした。
  2. カルシウム依存性プロテインキナーゼ群を単離し、低温およびジベレリン誘導性の遺伝子としてカルシウム依存性プロテインキナーゼ13を選抜した。
  3. カルシウム依存性プロテインキナーゼ13遺伝子導入イネのうち、過剰発現形質転換イネは幼苗期低温耐性を獲得しており、発現抑制形質転換イネは茎葉伸長を抑制された(図上)。さらに、形質転換イネではリン酸化情報伝達系が動いていることを明らかにした。
  4. カルレティキュリンと相互作用するタンパク質を検出し、カルスのcDNAライブラリーからOsCRTintP1、幼苗基部のcDNAライブラリーからOsCRTintP2を単離した。形質転換イネ作出によりこれらの2つの遺伝子が低温耐性、あるいは茎葉伸長に関与していることを証明した(図下)。  5.OsCRTintP1は核移行性があり、さらにストレスで誘導されることを明らかにした。一方、OsCRTintP2は茎頂に特異的に存在し、ジベレリン・ブラシノライド応答性があることを明らかにした。


成果の活用面・留意点
  1. 今回得られた形質転換イネは、ストレス応答機構と植物ホルモン情報伝達機構の相互作用のモデルとなる。
  2. 今回得られた形質転換イネは、理想的な草型を持ちかつ低温耐性イネの作出につながり、その発現量の調節により草型改良に向けての分子育種の基礎的知見を得ることができる。
図表1 226404-1.jpg
カテゴリ 育種 乾燥 機能性 耐寒性

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