ショ糖リン酸合成酵素遺伝子を高発現させたジャガイモの収量特性の向上

タイトル ショ糖リン酸合成酵素遺伝子を高発現させたジャガイモの収量特性の向上
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2000~2004
研究担当者 古賀保徳
石丸健
石毛光雄
大杉立
大川安信
長菅輝義
田部井豊
柏木孝幸
発行年度 2004
要約 植物におけるショ糖合成の鍵酵素であるショ糖リン酸合成酵素遺伝子の高発現とそれに伴う活性の増加が、ジャガイモの収量並びに塊茎に含まれるショ糖含量を増加させることを、トウモロコシショ糖リン酸合成酵素遺伝子を導入したジャガイモを模擬的環境において栽培、解析することによって明らかにした。
キーワード ジャガイモ、収量、ショ糖合成、ショ糖含量
背景・ねらい ジャガイモはヨーロッパ、北米、アジアの多くの国で栽培されている重要な農作物である。ジャガイモの収量特性を向上させることは、我が国だけでなく世界レベルでの食糧増産においても重要である。ジャガイモは光合成によって得られた炭水化物の大部分をデンプンとして葉に蓄積することから、ジャガイモの収量や品質を向上させるためには、葉のショ糖合成能力を高め、炭水化物を速やかに塊茎(イモ)に運び出す必要がある。ショ糖リン酸合成酵素(SPS)は植物のショ糖合成全体を律速している。ジャガイモの収量や品質を決定するメカニズムを解明し、優れた品種の作出に向けた知見を得るために、トウモロコシのSPS遺伝子をジャガイモ(品種“メークイン”)に導入した組換えジャガイモを作出し、その特性を解析した。
成果の内容・特徴
  1. 閉鎖系において組換えジャガイモ4系統をワグナーポットで栽培し、収量特性を解析した。その結果、組換えジャガイモの塊茎重はSPS活性の増加に伴い大きくなり、最もSPS活性が高い系統(Ag1203)では、コントロール(メークイン)の1.5倍になった。更にAg1203を通常の栽培条件に近似した模擬的環境(隔離圃場)で栽培し、その特性を解析した。
  2. 組換えジャガイモ(Ag1203)の葉のショ糖リン酸合成酵素活性はコントロール(メークイン)の3.8倍(96.4±3.2μmol/mg クロロフィル/h)に増加した。葉からの炭水化物の転流速度は、コントロールの1.2倍(11.6±0.5μmol glucose/g FW/h)に増加していた。また、Ag1203は、コントロールに比べ葉の老化速度が有意に遅くなった。
  3. 一般形態並びに他感性物質の産生能、周辺植物並びに微生物相への影響等の安全性評価項目に関して、Ag1203とコントロールに差異は見られなかった。Ag1203とコントロールともウイルスの感染はなかった。
  4. Ag1203の収量(全塊茎重)並びに塊茎の平均重はコントロールの約1.2倍に増加した(図1)。また、Ag1203の塊茎に含まれるショ糖量はコントロールの2.1倍に増加していた(表1)。
  5. 以上の結果より、ショ糖リン酸合成酵素(SPS)の遺伝子の高発現によるSPS活性の増加が、ジャガイモ(メークイン)の炭水化物の転流を向上させ、ひいては収量特性並びに品質に直結する塊茎のショ糖含量を増加させることが明らかになった。

図1

表1
成果の活用面・留意点
  1. 複数年にわたる収量特性並びに食品としての安全性評価の検討後、組換えジャガイモ(Ag1203)の育種母本としての利用が期待できる。
  2. 葉のSPS活性は、ジャガイモの収量特性に関わる転流能力の指標として利用可能であると考えられる。
図表1 226408-1.jpg
図表2 226408-2.jpg
カテゴリ 育種 栽培条件 とうもろこし ばれいしょ 品種

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