タイトル |
インスリン分泌促進機能を有する改変グルカゴン様ペプチド(mGLP-1)蓄積米の開発 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2000~2004 |
研究担当者 |
高岩文雄
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発行年度 |
2004 |
要約 |
インスリンの分泌を促進するペプチドホルモンであるGLP-1を高蓄積する米を開発するために、改変したmGLP-1を単独で発現させる形質転換イネを作成したが、発現が認められなかった。そこで融合タンパク質または直列に連結したmGLP-1を発現する形質転換イネを作成することによってmGLP-1を高蓄積させた米の開発に成功した。
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キーワード |
GLP-1、糖尿病、米、形質転換、健康機能性
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背景・ねらい |
日本の糖尿病患者は約740万人、予備軍まで合わせると約1640万人に達すると推定されており、この内の約9割は生活習慣が原因である2型糖尿病と考えられている。グルカゴン様ペプチド(GLP-1)は血糖値に依存してインスリンの分泌を促進するペプチドホルモンの1種であり、糖尿病患者ではこのGLP-1が少なくなっているといわれている。そこで、GLP-1を高蓄積させた米を開発し、この米を食べることによって糖尿病を予防・改善することができるのではないかと考え、mGLP-1を多量に含む遺伝子組換え米の開発を行った。
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成果の内容・特徴 |
- ヒトGLP-1を消化酵素耐性に改変したmGLP-1単体を直接イネ胚乳中に単独で発現させた形質転換イネではサイレンシングが起こり、その発現は認められなかった。
- mGLP-1をイネの種子貯蔵タンパク質であるグロブリンの可変領域に挿入し、さらに小腸から吸収されるようにmGLP-1の両末端をトリプシンで切断されるように工夫し、形質転換イネを作成した。その形質転換イネでは、融合タンパク質としてmGLP-1が種子中に高蓄積することが確認された。さらにMATベクターによるマーカーフリー組換えイネを作出し、mGLP-1の種子中の蓄積レベルを調べたところ、通常の選抜マーカーシステムで作出した組換えイネに比較し、最大で5倍程度(50~60μg/粒)に蓄積レベルが高まっていた(図1)。
- グロブリンとの融合mGLP-1を高蓄積した米から抽出したタンパク質を、トリプシン処理しマウスの肝細胞に与えたところ、インスリンの分泌が確認された(表1)。しかし、このグロブリン融合米を炊飯し、マウスに給餌したところ、血糖値の低下作用はコントロールの非形質転換米と比較し有意な差は見られなかった。
- 直列に5連結したmGLP-1(トリプシンにより単体に切り出されるように工夫)を発現する形質転換体ではサイレンシングが回避され、mGLP-1が高蓄積(最高約180μg/粒)することが確認された(図3)。
- 5連結したmGLP-1蓄積米を炊飯し、マウスに食べさせ血糖値の低下能を調べたところ、コントロール給餌マウスに比べ、有意な血糖値低下作用が見られた(図4)。
図1
図2
図3
表1
図4
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成果の活用面・留意点 |
- 単独ではサイレンシングを起こした導入遺伝子を融合タンパク質または直列に連結させることによってサイレンシングを回避することに成功し、形質転換イネを作成する上で問題となるサイレンシングを回避する方法を示した。
- 血糖値に依存してインスリン分泌促進機能を持つペプチドを米中に高蓄積させる手法を開発し、mGLP-1集積米が経口摂取により、血糖値低下機能を示すことを明らかにした。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
機能性
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