カイコ2型濃核病ウイルス抵抗性遺伝子の単離と解析

タイトル カイコ2型濃核病ウイルス抵抗性遺伝子の単離と解析
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2003~2006
研究担当者 門野敬子
伊藤克彦
野畑順子
山本公子
笹沼基恵
笹沼俊一
江口良橘
原和二郎
三田和英
発行年度 2005
要約 カイコ2型濃核病ウイルスに対する抵抗性遺伝子(nsd-2)を、カイコゲノム情報を用いて単離した。抵抗性カイコと感受性カイコでの候補遺伝子の塩基配列の比較により、中腸で発現している膜タンパク質遺伝子の欠損が、抵抗性の原因であった。
キーワード
カイコ、ウイルス抵抗性、濃核病ウイルス、膜タンパク質、中腸、DNV
背景・ねらい カイコには、体色、斑紋、体型、休眠性などについて様々な突然変異形質があり、それらは形質マーカーとして連鎖地図上に位置づけられている。濃核病ウイルス抵抗性は、ウイルスの接種量をどれだけ増やしても全く感染がみられない特異な現象で、抵抗性と感受性の品種・系統を用いた連鎖解析により、3種類の抵抗性遺伝子が連鎖地図にマップされている。しかし、いずれの原因遺伝子も単離されていない。そこで、近年急速に情報解析とデータベース化が進んだカイコゲノム情報を利用して、2型濃核病ウイルス抵抗性遺伝子(nsd-2)の単離とその遺伝子解析を試みた。
成果の内容・特徴
  1. nsd-2 近傍のESTマーカーを出発点として、BACクローンのスクリーニングとコンティグ化による染色体歩行を続け、nsd-2 と密接に連鎖した領域を500kb内に限定できた。この領域内で詳細なPCRプライマーを設計して、抵抗性に特異的な約6kbの欠損領域を見出した(図1)。
  2. この欠損領域の塩基配列を決定し抵抗性と感受性系統等の中腸から調製したRNAでRTPCRを行ったところ、発現が予測された遺伝子が転写されており、転写産物のサイズが抵抗性では小さかった(図2)。
  3. RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)法によって、抵抗性と感受性におけるこのcDNAの全長塩基配列を決定し、その遺伝子構造を明らかにした(図3)。本遺伝子は、14個のエクソンから成り、抵抗性では、ゲノムの欠損を反映して、エクソン5から13を失っており、エクソン14は存在するものの、それまでの欠損によってアミノ酸の翻訳枠がずれるために、すぐに終止コドンが現れた。
  4. カイコ4齢1日目幼虫の種々の組織で、RT-PCRによって本遺伝子の発現部位を調べたところ、中腸のみで転写産物が見られ、翻訳アミノ酸配列から推定されたタンパク質の2次構造から、この発現産物は、糖鎖の修飾を2カ所に持つ12回膜貫通型の膜タンパク質であった(図4)。カイコ2型濃核病ウイルスは、中腸のみに感染する。このことからも、中腸で特異的に発現する本遺伝子が、カイコ2型濃核病ウイルス抵抗性遺伝子 nsd-2 であると強く示唆された。
成果の活用面・留意点
  1. 今回の成果は、map-based cloningやpositional cloningと呼ばれる、地図情報やゲノム情報を利用した遺伝子単離法が成功したカイコにおける初めての例である。抵抗性の原因遺伝子が単離できたことで、本ウイルスの感染機構の解明が大きく進展すると期待される。
  2. 今回単離された遺伝子は、カイコの形質転換による相補性検定を行うことによって、nsd-2 であると結論でき、現在形質転換カイコの作成を進めている。
カテゴリ カイコ データベース 抵抗性 抵抗性遺伝子 品種

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