タイトル |
ブタ完全長cDNA配列10,147個の解読とそのデータベースの構築 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2004~2006 |
研究担当者 |
上西博英
小川智子
粟田崇
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発行年度 |
2006 |
要約 |
ブタの15種類の組織・細胞に由来する完全長cDNAライブラリーを用いて、約16万個のクローンからESTを取得した。さらに代表的なクローンを抽出し、5,600個以上の遺伝子に相当する10,147個の完全長cDNA配列の決定を行い、データベースを構築した。
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キーワード |
ブタ、EST、完全長cDNA、データベース
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背景・ねらい |
臓器の大きさ等、ヒトに近い生理的特徴を持つブタは、DNA情報を用いた高度な育種改良だけでなく、再生医療や実験モデル動物としての利用への期待に大きいものがあるが、ゲノムの塩基配列や、実際に機能を発揮している遺伝子の情報については、まだ十分に得られていなかった。ゲノム上で実際に機能している遺伝子の情報を収集する方法としてcDNAライブラリーを構築して網羅的に解析する方法があるが、ブタでは、技術的困難さから、これまで収集された情報は各遺伝子の全長を必ずしも含んだものではなかった。そのため、ブタの医療応用や品種改良における研究に有用かつ正確なブタの遺伝子情報を収集し、広く研究者が利用できるようなデータベースを作成することが望まれていた。そこで、担当者らは完全長cDNAライブラリーに基づくESTと、代表クローンの全長解読とそのデータベース化により、ブタ遺伝子情報基盤の構築を試みた。
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成果の内容・特徴 |
- ブタで機能している遺伝子をなるべく網羅的に取得するために、15種類の組織・細胞からcDNAライブラリーを構築し(内13種類の組織・細胞では完全長cDNAライブラリーを構築)、EST解析を行うことで、162,631個の高品質なESTを取得した。これらの配列はブタのゲノム上に存在する遺伝子(20,000~25,000程度)の半数近く(約10,000個以上)に相当すると考えられる。
- これらのESTの中で同一の配列をまとめた中の代表クローンの全長を、プライマーウォーキング法により解読することで、10,147個の完全長cDNA配列の決定を完了した。これらの内8,000個弱のクローンは5,600個以上の遺伝子に由来するもの(一部はスプライシングバリアントを含む)に相当すると考えられる。残りの約2,000個には、多くのnon-coding RNAと呼ばれる、遺伝子の発現の調節に関わるRNAに由来するものも含まれていると考えられる。
- これらEST、及び完全長cDNAの配列情報を、ヒト、マウス、ウシ、イヌといった全ゲノム解読が行われた代表的な哺乳動物の遺伝子と比較した情報を付加しデータベース化を行った。構築したデータベースは、遺伝子名、キーワードによる検索、またGene Ontologyの分類に基づいた表示のインターフェース等を備えたブタ発現遺伝子情報データベース「Pig Expression Data Explorer(PEDE)」として一般に公開した(http://pede.dna.affrc.go.jp/)。本データベースはブタ完全長cDNAのデータベースとしては現在世界で唯一のものである。
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成果の活用面・留意点 |
- 遺伝子の配列あるいは周辺における塩基配列の違いについてブタ品種間・品種内での検出が加速化し、ブタの遺伝子と抗病性や肉質、肉量等の関連性についての解析の進展が見込まれる。
- ブタ遺伝子全長の解読をさらに推進し、ブタの実験モデル動物・再生医療への応用やDNA情報を用いたブタ育種において、より有用性の高いブタ遺伝子カタログの構築を目指す。
- 現在、日本も含めた国際共同研究により推進中のブタ全塩基配列解読において、ゲノム塩基配列上での遺伝子の構造を決定するために本データを活用する。
- 全長解読を完了したcDNAクローンは、生物研DNAバンクを通じた配布を行う予定である。
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カテゴリ |
育種
データベース
品種
品種改良
豚
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