タイトル | トマトモザイクウイルス (ToMV)ゲノム複製を阻害する遺伝子 |
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担当機関 | (独)農業生物資源研究所 |
研究期間 | 2005~2007 |
研究担当者 |
石橋和大 石川雅之 飯哲夫 |
発行年度 | 2007 |
要約 | ToMV抵抗性遺伝子Tm-1をもつトマトの細胞抽出液に、試験管内ToMV RNA複製阻害活性を検出し、これを精製することによりTm-1遺伝子産物を同定した。さらにこのタンパク質が、ToMVのRNA複製を司るタンパク質に結合して、その働きを阻害することを明らかにした。 |
キーワード | トマト、トマトモザイクウイルス、抵抗性遺伝子 |
背景・ねらい |
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成果の内容・特徴 | 1.タバコの細胞抽出液を用いた試験管内ToMV RNA翻訳・複製系に、Tm-1トマトの細胞抽出液を添加すると、複製反応が阻害されることを見いだした。 2.Tm-1トマトの細胞抽出液から、試験管内ToMV RNA複製を阻害する活性を担う因子を、各種カラムクロマトグラフィー等による6段階の分画操作を経て精製し、分子量約8万のタンパク質 (p80) を同定した(図1)。さらに、試験管内翻訳により合成したp80が、試験管内ToMV RNA複製阻害活性をもつことを確認した(図2)。p80は、ToMVがコードし、RNA複製を司るタンパク質(130-kDa, 180-kDa複製タンパク質)の合成あるいは蓄積には影響を与えなかった。 3.p80をコードする遺伝子がTm-1と遺伝学的に共分離すること、Tm-1 トマトにおいてp80遺伝子をノックダウンするとToMVの増殖が許容されること、ToMV感受性トマトでp80を発現させるとToMVに対して抵抗性となること(図3)から、Tm-1がp80をコードすることが明らかとなった。 4.p80 (Tm-1) はToMVの130-kDaタンパク質に結合した(図4)。また、一旦ToMVのRNA複製複合体が生体膜上に形成されてしまうと複製を阻害できなかった。従ってTm-1は、複製タンパク質に結合して複製複合体の形成過程を阻害すると考えられた。Tm-1遺伝子のこれらの性質は、これまでに同定された植物ウイルス抵抗性遺伝子のいずれとも異なるユニークなものである。 |
成果の活用面・留意点 | 1.ある病原体が侵入しても、過敏感反応等の誘導抵抗性を介することなく感染を免れる生物が、その病原体の特異的増殖阻害因子を予め備えている場合があることを示すことができた。このような事例がいかに遍く存在しているかを明らかにすることは今後の課題である。 2.増殖阻害因子を備えている植物は「非宿主」と見なされる。したがって、非宿主を探索することにより、新規抵抗性遺伝子を多数発見できる可能性がある。 |
カテゴリ | 植物ウイルス たばこ 抵抗性 抵抗性遺伝子 トマト |