タイトル | 根粒菌・菌根菌共通共生遺伝子Cyclops同定と機能解析 |
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担当機関 | (独)農業生物資源研究所 |
研究期間 | 2002~2008 |
研究担当者 |
今泉(安楽)温子 馬場真里 矢野幸司 林 誠 |
発行年度 | 2008 |
要約 | 根粒菌・菌根菌の共生に関与する分子メカニズムを明らかにするために、ミヤコグサの共通共生遺伝子であるCyclops を同定した。CYCLOPSはカルシウムスパイキングの受容に関わるCCaMKと相互作用することで機能すると考えられた。 |
キーワード | 根粒菌、菌根菌、共生、ミヤコグサ、マメ科、共通共生遺伝子 |
背景・ねらい |
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成果の内容・特徴 | 1.マメ科植物の根粒菌共生変異体の解析から、これまで7つの遺伝子が、根粒菌と菌根菌の双方との共生に必要であると考えられてきた。我々の研究成果を含め、ミヤコグサからは既にSymRK、Castor、Pollux、Nup85、Nup133、CCaMK という6つの共通共生遺伝子が同定され、機能解析が進められてきた。今回、残る1つの遺伝子Cyclops について、遺伝子の同定と機能解析を行った。 2.ミヤコグサcyclops 変異体では、根粒菌の感染が根毛への進入以前で停止しており(図1)、菌根菌においては付着器の異常による内生菌糸の発達不全が見られた。 3.Cyclops 遺伝子を同定した結果、その遺伝子産物は核タンパクであった。 4.酵母を用いた2ハイブリッド法により、カルシウムスパイキングの受容体と考えられる、根粒菌、菌根菌の感染を支配するカルシウム・カルモジュリン依存型キナーゼCCaMKはキナーゼ活性依存的にCYCLOPSと相互作用したため、CCaMKとCYCLOPSは協調的に機能すると考えられた。これは、共生遺伝子産物間の協調的機能を明らかにした世界で最初の例となった。 5.精製したタンパクを用いた実験において、CCaMKはカルシウムおよびカルモジュリン依存的にCYCLOPSをリン酸化し(図2)、共生シグナル伝達における分子メカニズムの一端が明らかとなった。 6.自己リン酸化アミノ酸T265の点変異を導入した機能獲得型変異CCaMKT265Dによる自発根粒形成はCYCLOPS非依存的であったため(図3)、CYCLOPSはCCaMKの活性(自己リン酸化)維持に関与していると考えられた。 |
成果の活用面・留意点 | 1.ミヤコグサで同定された菌根菌共生遺伝子のホモログを非マメ科植物で解析することで、菌根菌共生における植物に共通した分子メカニズムを知ることができる。 2.根粒菌・菌根菌の感染を人為的にコントロールするための基盤を整備するために、今回同定された共通共生遺伝子のみならず、共生に関与する遺伝子の全貌を明らかにする必要がある。 |