貯蔵タンパク質含有量を低減させた組換えイネ

タイトル 貯蔵タンパク質含有量を低減させた組換えイネ
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 1998~2002
研究担当者 黒田昌治
増村威宏(京都府立大)
田中國介(京都府立大)
発行年度 2003
要約 遺伝子組換えにより、種子の貯蔵タンパク質であるプロラミンの含有量が著しく減少したイネが作出できる。この種子では、プロラミン以外の貯蔵タンパク質の含有量は原品種とほぼ同等であり、総貯蔵タンパク質含有量は低減する。
キーワード 組換えイネ、貯蔵タンパク質、プロラミン
背景・ねらい  種子のタンパク質の大部分は、貯蔵タンパク質という形で保持されており、イネ種子の場合はグルテリン、グロブリン、プロラミンである。イネ種子(米)の貯蔵タンパク質は、コムギやダイズの場合と異なり加工特性に寄与しておらず、含有量が高くなると米の品質を低下させることが指摘されている。一方、有用タンパク質の遺伝子を導入することにより、種子に外来タンパク質を大量生産させる試み(バイオリアクター)が注目されているが、その場合に種子本来の貯蔵タンパク質を減らして、生じた余剰のアミノ酸を効率良く有用タンパク質の生産に利用する手法が考えられている。
 このような背景から、貯蔵タンパク質群が欠損ないし低減した変異イネの探索が精力的に行われているが、プロラミンの含有量が著しく減少した系統は、いまだ見い出されていない。そこで遺伝子組換えにより、プロラミンの発現が低減した低プロラミンイネの作出を試みる。また、この技術を、グルテリンの発現が低減した低グルテリンイネに応用し、総貯蔵タンパク質含有量を低減させうるかを検証する。
成果の内容・特徴 1.
最も含有量の多いプロラミン分子種である13kDaプロラミンを標的として、図1に例示した構築遺伝子(カセットAまたはB)をイネ(日本晴)に導入する。得られた組換えイネの種子タンパク質を抽出して、SDS-PAGEにおけるバンド濃度から、各種貯蔵タンパク質の含有量を解析する。その結果は図2aに示す通りであり、組換え種子での13kDaプロラミン(Bのバンド)のバンド濃度は、原品種と比較して著しく減少し、低プロラミン種子が得られる。なお、この種子でのグルテリンおよびグロブリンの含有量は、原品種とほぼ同等である。
2.
抗体を用いたウエスタン解析により得られる13kDaプロラミンのバンド濃度より、13kDaプロラミン含有量が定量できる(図3)。低プロラミン組換えイネでは、開花後1週間と完熟種子の13kDaプロラミン含有量はほぼ同等であり、開花後1週間以降、種子に13kDaプロラミンはほとんど集積していない。完熟種子でのバンド濃度を比較すると、低プロラミン組換えイネ種子の13kDaプロラミン含有量は、原品種の10%以下である。
3.
低グルテリン品種であるLGC-1は、グルテリン含有量が減少する一方で、特にプロラミン含有量が著しく増加することで、グルテリンの減少分を相補している。これに図1の構築遺伝子を導入すると(図2b)、低グルテリンな形質が保持されたまま、13kDaプロラミンが著しく減少する。よって、総貯蔵タンパク質含有量が低減した米が得られる。
4.
図1の構築遺伝子を用いることにより、上記の品種以外(コシヒカリ、五百万石などのジャポニカ種、Basmati、IR8などのインディカ種)においても、同様に低プロラミンイネが作出できる。また、次世代以降の種子も、組換え当代の場合と同様に低プロラミン種子となる。
成果の活用面・留意点 1.
低プロラミン組換えイネの品質特性、発芽特性については、今後さらに解析が必要である。
2.
得られた低貯蔵タンパク質イネ系統は、種子をバイオリアクターとして用いて、有用タンパク質を効率的に生産するための母本として利用できる。
3.
図1で示した遺伝子カセットBの基本構造は、プロラミン以外のイネ遺伝子の発現抑制にも利用可能であり、遺伝子の機能解明研究に有用である。
図表1 226488-1.gif
図表2 226488-2.gif
図表3 226488-3.gif
カテゴリ 加工特性 大豆 品種

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