タイトル |
成熟期後の降雨は小麦容積重を低下させる |
担当機関 |
愛知農総試 |
研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
藤井潔
辻孝子
吉田朋史
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発行年度 |
2005 |
要約 |
成熟期後の3回の降雨により10日程度刈遅れた場合、小麦容積重は30~60g/L程度低下する。この容積重低下の要因として、粒の膨張(主因)と種皮表面の平滑さが低下することが挙げられる。ウシオコムギ、農林61号などは容積重の低下程度が比較的小さい。
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キーワード |
コムギ、容積重、成熟期、降雨、刈遅れ、梅雨、早生化
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背景・ねらい |
小麦の容積重は新たなランク区分基準の品質評価項目に採用され、833g/L以上が基準値とされ、840g/Lが品質取引の基準となっている。一方、小麦容積重に及ぼす栽培要因の影響についてはまだ十分解明されていない点が残されている。東海地域では小麦の成熟期が梅雨入りの時期と重なり、降雨により刈り遅れた年の容積重が低下した事例がみられる(JAあいち経済連資料)。そこで、成熟期後の降雨による刈り遅れが小麦容積重に及ぼす影響について、穂発芽性基準品種を含む25品種を用いて明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 小麦成熟期後の降雨により容積重は大きな悪影響を受ける。成熟期後の3回の降雨により10日程度刈り遅れた場合、容積重(ブラウエル穀粒計)は30~60g/L(平均で45g/L程度、約5%)低下する(表1)。降雨遭遇回数が10回以上と多く、15~25日程度刈り遅れた場合には平均で65g/L程度(約8%)低下する場合もある(表1)。伊賀筑後オレゴン等の穂発芽耐性の強い品種でも成熟期後降雨の影響で容積重は低下する(表2)。
- 成熟期後降雨による刈り遅れが容積重を低下させる原因としては、完熟した種子が吸水により膨張し、その後の立毛乾燥や温風乾燥によっても復元しきれないこと(図1)と、種皮に凸凹が発生して種子表面の平滑さが低下すること(図2)が挙げられる。粒体積の膨張率(106%)からみて粒の膨張が容積重低下の主因とみられる(図1)。一方、千粒重は成熟期後降雨による影響をほとんど受けない(表1)ため粒の比重は低下する。
- 成熟期後の3回の降雨により10日程度刈遅れた場合、ウシオコムギは他の品種より容積重の低下程度が小さく、ニシカゼコムギ、農林61号(愛知原原)、あやひかり、愛知小麦6号、ゼンコウジコムギ(愛知保存)も低下程度が小さい傾向がみられる(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 梅雨入り前に収穫可能な早生品種の採用と普及は成熟期後の降雨による容積重の低下を回避するのに効果的である。
- 穂発芽の発生やフォーリングナンバーの低下が起こらない程度の成熟後の降雨条件でも容積重は低下することがあり、粒の褪色も発生することがあるので注意する。
- 成熟期後降雨による容積重の低下程度に品種間差異がみられるが、その要因解明は今後の課題である。
- 容積重の測定は、成熟期および成熟後10、15、25日目に手刈り収穫し、温室内で乾燥した材料を試験用脱穀機により脱穀後、電気式温風乾燥機により水分11%前後に乾燥したものを、試験用脱穀機のふるい板に脱芒用の板を用いて脱芒処理したのち2.2mmのグレーダーで調製した試料を用いた。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
乾燥
小麦
品種
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