イネの遺伝子の発現に係わるCpGアイランド様ゲノム領域

タイトル イネの遺伝子の発現に係わるCpGアイランド様ゲノム領域
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 作物研究所
研究期間 2000~2005
研究担当者 芦川育夫
坂田克己(三菱スペースソフト)
沼 寿隆(農業生物資源研)
発行年度 2005
要約  イネの遺伝子のうち約1/3はその転写開始部位付近にCGの2塩基配列が富むCpG island様のゲノム領域を持つ。この領域をもつ遺伝子はそれを持たない遺伝子に比べより強く、広い組織で発現する傾向にある。染色体上で、これらCpG island様領域をもつ遺伝子はランダムではなく、クラスター的に分布している。
キーワード イネ遺伝子、遺伝子発現、CpG island
背景・ねらい  イネゲノムの全塩基配列は、ゲノム中の遺伝子の機能情報に加え、遺伝子の発現に係わる要素の情報も含む。ヒトゲノムにおいては遺伝子の転写開始点付近にCGの2塩基配列に富むCpG islandと呼ばれるゲノム領域があり、遺伝子発現の制御に係わると報告されている。このCpG islandがイネにおいても存在し、ヒトと同様の機能を持つかをイネゲノム塩基配列の解析、遺伝子の発現、DNAメチル化の解析を行い、解明する。
成果の内容・特徴 1.
イネゲノム内にはCG2塩基に富む領域(CpG cluster)が存在する。多くのCpG clusterは遺伝子の領域内か近傍に位置する。イネの遺伝子は、このCpG clusterとの位置関係により5つのクラスに分類されるが、大部分はそれらのうちのクラス1, 2, 5に属する(図1)。このうちクラス1遺伝子は、遺伝子の転写開始点近傍にCpG clusterを持ち、ヒトゲノム中のCpG islandを持つ遺伝子に形態上似ている。
2.
EST情報(http://cdna01.dna.affrc.go.jp/cDNA/)を用いたin silico遺伝子発現解析、および実験による発現解析の結果は、クラス1遺伝子は他の遺伝子に比べより多くの組織で、より強く発現している傾向にあることを示している。これは、イネのクラス1遺伝子CpG clusterは、ヒトのCpG islandに機能的に対応していることを示唆している。
3.
3つのクラスの遺伝子はイネ染色体上でランダムに分布せず、クラスごとにセグメントとして存在する傾向にある。クラス1遺伝子と他の遺伝子は発現特性が異なるため、EST解析でカタログ化されるような発現が強く、組織特異性が低い遺伝子のイネ染色体上での分布は、密に分布する領域と疎に分布する領域のモザイクとなる(図2)。
4.
クラス2, 5遺伝子領域のメチル化程度はクラス1遺伝子に比べわずかに高い。このメチル化程度の差が遺伝子発現様式の異なりと関連するかは不明である(表1)。
成果の活用面・留意点 1.
さらに研究を進めることにより、遺伝子組換えにより作物へ導入した外来遺伝子の発現レベルの染色体上挿入位置依存性の機構を解明するための基礎的な知見となりうる。
図表1 226618-1.gif
図表2 226618-2.gif
図表3 226618-3.gif
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