タイトル | 幼苗検定による低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス系統の作出 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 1998~2001 |
研究担当者 |
吉村義則 原田久富美 須永義人 杉田紳一 畠中哲哉 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 幼苗時の硝酸態窒素濃度に基づいて表現型循環選抜を繰り返すことにより、低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス集団が作出できる。市販イタリアンライグラス品種の硝酸態窒素濃度には品種間差が存在し、作出された集団の硝酸態窒素濃度は最も低い。 |
キーワード | イタリアンライグラス、育種、硝酸態窒素、選抜、肥料、品種間差、幼苗検定 |
背景・ねらい | 畜産経営の規模拡大を背景とし、自給飼料生産においては家畜ふん尿主体の施肥管理が行われている。イタリアンライグラスは、窒素施肥によく反応して硝酸態窒素濃度が高くなりやすい作物として知られている。そこで、イタリアンライグラスにおける硝酸態窒素濃度の低減化技術として、イタリアンライグラスの硝酸態窒素濃度における遺伝的変異とその利用について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 窒素を多量に施用した圃場で栽培された2倍体イタリアンライグラスの硝酸態窒素濃度において品種間差が認められ、品種選択が硝酸態窒素の低減に有効である(図1)。また、ワセアオバの硝酸態窒素濃度は3年間を通じて最も低く、一方、ワセホープⅡは最も高いので、ワセアオバとワセホープⅡは2倍体イタリアンライグラスにおける硝酸態窒素蓄積に関する標準品種として利用できる。 2. 温室内で育苗セルの下穴から麻ひもを通じ50mMのKNO3溶液を自由に吸水させて、6週間生育させると「ニオウダチ」幼植物個体の硝酸態窒素濃度は正規分布に適合する。最大値と最小値では3倍程度の大きな差が認められ、品種内においても個体間で硝酸態窒素濃度の変異が存在する(図2)。 3. 硝酸態窒素濃度の低い幼植物について、循環選抜を7%の選抜強度で3回繰り返すことにより得られた各世代の幼植物時の硝酸態窒素濃度は、選抜が進むにつれて低下した(図3)。3世代を通じた実現遺伝率は0.21であった。 4. 表現型循環選抜を繰り返して得られた各世代の成植物時の硝酸態窒素濃度を、窒素を多量に施用したポット試験により比較すると、選抜が進むにつれて硝酸態窒素濃度は低下し、3回の選抜で20-40%減少した。従って、幼苗検定により選抜効果が期待できる(図4AB)。 5. また、循環選抜を3回を行って得られた集団の硝酸態窒素濃度は、低硝酸蓄積性の標準として利用できる可能性のあるワセアオバよりも低く、この集団は育種素材として利用できる(図44B)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 作出された集団及び幼苗検定法は、低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスの品種開発や遺伝解析に利用できる。 2. 非常に多量に窒素が施用された条件では、遺伝的変異を利用する方法は、硝酸塩中毒を回避できるレベル(2gNO3-N kgDW-1)まで硝酸態窒素濃度を低下させることができない。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 肥料 育種 育苗 イタリアンライグラス 規模拡大 経営管理 施肥 品種 品種開発 |