タイトル | イタリアンライグラスとオーチャードグラス属間雑種の効率的作出法 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 1996~2001 |
研究担当者 |
荒川明 小松敏憲 藤森雅博 内山和宏 |
発行年度 | 2001 |
要約 | イタリアンライグラスにオーチャードグラスの花粉を受粉し、1日後に2,4-D(100p.p.m.)処理を2日間行い、交雑約18日後にMS寒天培地(寒天6g/l、イースト抽出物1g/l添加)で胚を培養することにより、効率的(獲得率1%)に雑種植物を得ることができる。 |
キーワード | イタリアンライグラス、オーチャードグラス、属間雑種、胚培養 |
背景・ねらい | オーチャードグラスは、北海道から九州の中・高標高地に至る広い地域で栽培される永年草地の基幹草種であるが、消化率が主要寒地型イネ科牧草の中でも低く、消化性の向上が重要な育種目標となっている。これまで消化性の優れたイタリアンライグラスの遺伝子を導入するために、オーチャードグラスとの交雑が試みられたが、Oertel et al. (1996)らがDicamba(100p.p.m.)処理後に胚培養を行う方法により1個体の雑種植物(獲得率0.25%)を得ているのみであった。育種に利用するためには数多くの雑種個体が必要であり、効率的な雑種の作出法の開発を行った。 |
成果の内容・特徴 | 1. 図1に示すような方法で2,4-D処理後に胚培養を行うことにより、効率的(獲得率1%)にイタリアンライグラスとオーチャードグラスの属間雑種植物(図2)が作出できる。 2. 雑種形成に及ぼすホルモン処理の効果は、2,4-D処理で顕著にみられた。濃度100p.p.m.の水溶液を2日間穎果内に滴下し、発育した胚を培養することにより、1998年に1個体(1.1%)、1999年に2個体(1.3%)雑種植物を作出することができた(表1)。 3. Dicamba処理では、100p.p.m.の水溶液で2日間処理した場合に胚の発育が観察されたが、これらについて胚培養を行っても胚の発育が途中で停止し、植物体にはならなかった(表1)。 4. 得られた雑種F1植物と両親の葉の形態を比較すると、未展開葉はイタリアンライグラスでは巻かれた状態であるのに対して、雑種F1植物ではオーチャードグラスと同様に折りたたまれた状態であった。その他の葉色、葉耳、葉舌、葉身、葉鞘については、雑種F1植物は両親の中間であった。細胞核の相対DNA量も両親の中間の値を示した(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. これまで交雑が不可能であった遠縁間での交雑に利用できる。 2. 他の遠縁間交雑に利用する場合は、2,4-D濃度、胚培養の時期と培地について、調整が必要になる場合がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 育種 イタリアンライグラス 寒地 受粉 |