タイトル | 遺伝マーカーによる外来雑草イチビの系統識別 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 1998~2001 |
研究担当者 |
吉村義則 黒川俊二 芝池博幸 秋山永 渡辺修 |
発行年度 | 2001 |
要約 | イチビの2種類のさく果の色は核に座乗する遺伝子により制御を受けており、系統識別のための遺伝マーカーとして有用である。また、葉緑体DNAにも系統間に変異が見られ、これら2つの遺伝マーカーによって、イチビを3つの系統群に分けることができる。 |
キーワード | 雑草、とうもろこし、外来雑草、イチビ、遺伝マーカー、葉緑体DNA |
背景・ねらい | 近年、全国各地で外来雑草が急速に分布を拡大し問題となっている。この新たな侵入や分布拡大を効果的に防止するためには、侵入拡散実態を正確に把握する必要があり、それには遺伝マーカーの利用が極めて有効である。そこで、特に被害が大きく分布域も広範囲に広がっており、またわが国において古くから繊維作物として栽培されていたという側面を併せ持つイチビについて、その侵入拡散実態を把握するための遺伝マーカーを作成する。 |
成果の内容・特徴 | 1. イチビの完熟さく果の色には、黄白色と黒色の2種類の変異があり、その形質を支配している主働遺伝子は黒色が優性の核支配である(表1)。繊維作物としての生育特性を示す系統(以下、栽培系統とする)はすべて黄白色のさく果で、その他の雑草系統はすべて黒色であるため、さく果の色は系統識別の遺伝マーカーとして利用できる。 2. 葉緑体ゲノムの3つの領域において、3つの一塩基置換と1つの6塩基挿入・欠失、および1つの30塩基逆位が見られ、その変異パターンから、イチビ葉緑体DNAを二つのハプロタイプに分類できる(図1)。これらの変異がゲノム中の広範囲にわたっていることから、2つのハプロタイプは相当古い時期に分化したと考えられる。 3. 上記二つの遺伝マーカー、すなわち、さく果の色と葉緑体DNAハプロタイプを組み合わせると、世界中に分布しているイチビは3つの系統群に分かれる(表2、3)。 4. 栽培系統はすべて系統群Iに分類され、雑草系統には系統群IIあるいはIIIに分類される(表3)。このうち、IIはIと同じ葉緑体を持ち、IIIと同じ黒色のさく果を持つことから、系統群IIは系統群IとIIIの雑種系統群であると考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本成果で得られたイチビの系統識別法は、種子の移動を確認できる葉緑体DNAマーカーを取り入れたものであるため、侵入実態や拡散動向の把握に活用できる。 2. ここで遺伝マーカーとしてみたものは、すべて、適応能力などに関わる様々な形質とは関係が不明であるため、急激に拡散した系統がもつ雑草性との関連性を直接議論することはできない。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | 病害虫 雑草 DNAマーカー とうもろこし |