タイトル |
和牛繁殖肥育一貫経営におけるDNAマーカー情報活用の経済的有利性の推定 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2006~2006 |
研究担当者 |
小松正憲
千田雅之(中央農研)
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発行年度 |
2006 |
要約 |
和牛繁殖肥育一貫経営において、交配と肥育素牛選抜時に脂肪交雑基準値(BMS No.) や枝肉重量(CW)に関与する優良QTLハプロタイプをDNAマーカーにより判定・活用した場合、BMS No.のQTLに注目した場合には14,875円 ~ 36,875円 / 頭、CWのQTLに注目した場合には3,750円~17,875円 / 頭の販売価格の上昇が期待できる。
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キーワード |
和牛、DNAマーカー、QTL、脂肪交雑基準値、枝肉重量、販売価格、家畜育種・繁殖
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背景・ねらい |
近年、和牛においてマイクロサテライトDNAマーカーを利用した肉質に関与するQTLのマッピングと、ウシ・ゲノムドラフトシークエンス解析を背景としたSNPsマーカーの開発が急速に進み、これら情報の選抜・育種への活用が現実性を増してきている。本研究では、和牛繁殖肥育一貫経営において、交配と肥育素牛選抜時に脂肪交雑基準値(BMS No.) や枝肉重量(CW)に関与する優良QTLハプロタイプをDNAマーカーにより判定・活用した場合の経済的有利性を推定する。
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成果の内容・特徴 |
- 現在までの研究情報から、黒毛和種におけるBMS No.およびCWの優良QTLハプロタイプ置換効果は各0.5~1.0、15~25kgと推定する。枝肉価格決定の実状から、BMS No.が1ランク上がると枝肉単価は100~200円/kg 上昇する。また、枝肉価格は1,200~2,000円/kg、CWは440kg、タイピング費用(4マーカーマルチプレックス)は5,000円/個体、使用する種雄牛精液価格の差額3,000円と仮定する(仮定1)。
- 農家は子牛生産の際、種雄牛、母牛、子牛の肉質QTLハプロタイプを判定し、その情報を交配と肥育素牛選抜に利用する。その判定の結果、BMS No.及びCWに関する優良QTLハプロタイプを保有する肥育牛が肥育牛全体の50%から100%に増加し、また、BMS No.の肉質QTLハプロタイプを 持つことで個体のBMS No.が1ランク上がると仮定する(仮定2)。
- BMS No.のQTLに注目した場合、式1に示すとおり、母牛分娩回数を4回とすれば、14,875円 ~ 36,875円 / 頭の販売価格上昇が期待できる。
- CWのQTLに注目した場合、式2に示すとおり、母牛分娩回数を4回とすれば、3,750円~17,875円 / 頭の販売価格上昇が期待できる。
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成果の活用面・留意点 |
- タイピング費用(4マーカーマルチプレックス)、使用する種雄牛精液価格の差額、分娩回数は変動し、これらの価格変動に応じ個体販売価格の上昇も変動する。
- 和牛繁殖肥育一貫農家がもつ和牛集団におけるBMS No.及びCWに関する優良QTLハプロタイプの頻度は、農家ごとに変動する。この頻度に応じ個体販売価格の上昇も変動する。
- 黒毛和種におけるBMS No.およびCWの優良QTLハプロタイプ置換効果は、過去5年間に公表された学会誌および学会発表(BMS No.:7件;CW:5件)の情報から推定した。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
育種
経営管理
DNAマーカー
肉牛
繁殖性改善
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