トノサマバッタのアルピノ系統を利用した体色誘導ホルモン生物検定法

タイトル トノサマバッタのアルピノ系統を利用した体色誘導ホルモン生物検定法
担当機関 蚕糸・昆虫農業技術研究所
研究期間 1994~1994
研究担当者 小滝豊美
田中誠二
渡辺匡彦
発行年度 1995
要約 トノサマバッタのアルビノ系統にノーマル系統の神経系や内分泌系器官を移植すると、移植された幼虫の体に様々な色が誘導されることが明らかとなり、アルピノ幼虫を利用して体色誘導物質の生物検定法を確立した。蚕糸・昆虫農業技術研究所・生体情報部・増殖機構研究室
背景・ねらい トノサマバッタは個体密度に応じて形態・行動・生理的形質を著しく変化させる相変異を示す。低密度では薄い体色を呈する孤独相個体となるが、高密度になると黒化し、しばしば群れを形成して長距離飛翅をする群生相個体に変身し、作物に多大な被害をもたらす。トノサマバッタに関しては、過去数千編もの研究報告が存在するが、相変異のホルモン機構についてはほとんど解明されていない。この問題を解明するために、相変異形質の中でもっとも顕著な形質である体色多型を制御するホルモンの生物検定法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. トノサマバッタの沖縄系統から出現したアルビノ個体を選抜しアルピノ系統を作出し、アルビノが一対立遺伝子の劣性形質であることを明らかにした(図 1)。
  2. アルビノの4齢幼虫にノーマル系統の5齢幼虫の中枢神経系や内分泌系器官を移植したところ、そのアルピノ幼虫は数日で黒化し、5齢に脱皮した幼虫は様々な体色を発現させた(図 2A、B)。また、側心体抽出物をピーナッツ油に混ぜて注射したところ、同様に黒化が誘導された。
  3. コオロギ、キリギリス、ゴキブリ、カイコガ、アワヨトウ、スズメガ等の他種の様々な器官を、アルビノ幼虫に移植したところ、それらの昆虫の脳と側心体にもトノサマバッタに黒化を誘導する要因が存在することがわかった(図 2C-F)。
  4. アルピノの4齢1日目の幼虫にサンプルを注射し、その4目後に体色を黒化の程度により4段階に区分することにより、体色誘導活性の定量的評価が可能となった(図 3)。アルビノ系統は、集団飼育で容易に得られるため、多量のサンプルを検定することができる。
成果の活用面・留意点 この生物検定法は、トノサマバッタの相変異に関連した体色の内分泌機構の解明に有効であり、群生相特有の黒化現象を誘導するホルモンの化学的同定が現在進行中である。他のホルモンのトノサマバッタへの交差活性を調べるために、海外からの検定依頼も受けている。また、多種の昆虫に存在しトノサマバッタに黒化を誘導する物質をこの生物検定法で単離、同定し、更にそれらの機能を明らかにすることにより、昆虫ホルモンの多様性と進化に洞察を与える情報が得られると期待され得る。
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図表2 227288-2.jpg
図表3 227288-3.jpg
カテゴリ あわ カイコ 生物検定法 ナッツ

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