タイトル |
リボゾームRNA遺伝子とカイコヘモサイティン及び脊椎動物遺伝子の構造的相関関係 |
担当機関 |
蚕糸・昆虫農業技術研究所 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
カイコヘモサイティン及びヒト、ウシ、カエル由来の転写因子やアポリポ蛋白の遺伝子が部分的にリボゾームRNA遺伝子と表裏の関係にある。この事実は遺伝子進化上、リボゾームRNA遺伝子が動物の機能性蛋白質遺伝子の起源となった可能性を強く示唆している。
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背景・ねらい |
ヘモサイティンはヒトのフォンヴィルブラント因子や粘菌の細胞接着因子等に相同性のある機能ドメインをもつ糖蛋白質で、レクチン活性を有するカイコの生体防御蛋白質の一種である。系統進化上、脊椎動物および無脊椎動物の頂点に位置するヒト及び昆虫、さらに下等動物の粘菌の蛋白質の一次構造に相同性が見られることから遺伝子進化の良いモデルになると思われる。このような見地からヘモサイティンの遺伝子構造を解析し、他の遺伝子と比較検討することにより、その遺伝子進化を探ることとする。
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成果の内容・特徴 |
- ヘモサイティンのcDNA及び遺伝子の塩基配列を他の遺伝子と比較したところ、その5'非翻訳領域がリボゾーム28SRNA遺伝子の裏鎖に部分的にコードされていることが明らかとなった。
- 同様の関係がカエル転写因子遺伝子の3'非翻訳領域と28SrRNA遺伝子の表及び裏鎖にも存在することがわかった。さらにヒトの転写因子およびウシのアポリポ蛋白前駆体遺伝子の5'非翻訳領域と18SRNA遺伝子の裏鎖の間にも相同性があることが明らかになった。
- これらの結果から上述の昆虫、両生類、哺乳類由来の機能性蛋白質の祖先型遺伝子はリボゾームRNA遺伝子に由来し、リボゾームRNA遺伝子の増幅に伴ってその数を増し、長い進化の過程において機能ドメインが変化することにより現在の形になったものと推測される。このような機能ドメインの変化はJacobのtinkeringモデルで述べられている、機能ドメインのshufflingによって説明することができ、今後種々の蛋白質遺伝子の構造が明らかになることにより、リボゾームRNA遺伝子との相関関係を実証できるデータが蓄積されてくるものと思われる。
[具体的データ]
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成果の活用面・留意点 |
本成果は、動物の機能性蛋白質遺伝子起源がリボゾーム遺伝子であるという全く新しい遺伝子進化のモデルを提唱するものであり、進化理論に大きく貢献できるものと思われる。
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図表1 |
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カテゴリ |
カイコ
機能性
シカ
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