タイトル |
ナミハダニの黄緑型と赤色型は別種 |
担当機関 |
野菜・茶業試験場 |
研究期間 |
1994~1994 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
ナミハダニ(黄緑型)の3系統とナミハダニ(赤色型)の1系統を交配した結果、F1雌は中間的体色で出現したが、F2ではどの組合せでも雌に発育する個体はなく、以後の個体群は存続できないので、これらは別種である。
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背景・ねらい |
ナミハダニはイチゴ、ウリ類、バラ等の重要害虫であり、近縁種のニセナミハダニはカ-ネ-ション等の重要害虫である。両者はこれまで、寄生性、雌の体色、薬剤感受性の違い等から別種とされてきたが、近年、海外の報告を基にナミハダニとニセナミハダニは同一種とみなされ、前者はナミハダニ黄緑型、後者は赤色型と呼ばれるようになった(江原、1993)。これまで2種に扱われてきたものが1種になったため、生産現場や農薬登録上などで混乱が生じている。我が国のナミハダニとニセナミハダニでは交雑能力の検討が行われていないので、これらを同種とみなすことが妥当かどうかを交配実験で明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 盛岡(リンゴ)、高知(イチゴ)、沖縄(インゲンマメ)で採集したナミハダニ(黄緑型)3系統と高知(インゲンマメ)で採集したナミハダニ(赤色型)を正逆交配すると、いずれの組合せでもF1雌が生じ、その体色は中間色となる(表1)。
- F1雌に同じ試験で得られた雄を交配すると、いずれの組合せでもF2雌は1個体も出現しない。ハダニ類は交尾をしなくてもすべての雌が雄になる卵を産むが、このF1雌は産卵雌率も低く、産卵数も少なく、産まれた卵はほとんどふ化せず、わずかにふ化、発育した個体はすべて雄になる。
- 以上のように、我が国のナミハダニの黄緑型と赤色型の間ではF2雌が生じないので、交雑個体群の存続はありえない。従って、両者は今後もナミハダニ(Tetranychus urticae)とニセナミハダニ(T. cinnabarinus)として扱うべきである。
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成果の活用面・留意点 |
- 両者を別種とすることで、これまでの生態的知見や薬剤感受性のデ-タを生かすことができる。
- 生産現場での薬剤の選択、農薬登録上の混乱がなくなる。
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図表1 |
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カテゴリ |
病害虫
いちご
いんげんまめ
害虫
農薬
ばら
薬剤
りんご
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