春まき栽培向き根腐病抵抗性サヤエンドウ新品種‘さやたろう’（普及）

• 担当機関: 長野県中信農業試験場
• 研究期間: 1998～1998
• 研究担当者: 伊藤喜三男; 岡本潔; 元木悟; 小口伴二; 小林忠和; 小林優; 矢ノ口幸夫
• 発行年度: 1998
• 要約: エンドウ‘さやたろう’は、根腐病抵抗性を有し、草姿が高性で、植物体特性、さや特性、収量性が‘電光30日絹莢’と同等で優れ、温暖地及び寒冷地の春まき栽培に適したキヌサヤエンドウである。
• キーワード: エンドウ、‘さやたろう’、根腐病抵抗性、春まき栽培、キヌサヤエンドウ長野県中信農業試験場 畑作育種部 野菜育種指定試験地
• 背景・ねらい: エンドウは、栽培が容易で、収穫物が軽量で扱いやすく、高齢者でも、中山間地帯でも栽培可能な作目の一つである。しかし、連作により生育初期の立枯れによる欠株や収穫初期からの早期枯上がりの症状を示すエンドウ根腐病が発生しやすく、作柄を不安定にしている。そこで、根腐病抵抗性を有し、実用形質が優れたキヌサヤエンドウ品種を育成する。

成果の内容・特徴

1. 育成経過　昭和60～62年の検索の結果、‘Australia-B’を根腐病抵抗性育種素材に選定し、実用形　質を付与するために‘さやひかり’（協和種苗(株)市販品種）を交配した。平成元年から　根腐病抵抗性と実用形質について選抜を開始し、平成７年に選抜後代Ｆ１０世代から育種目　標にかなう有望系統を得たので‘桔梗４号’の系統名を付した（図１）。平成８～10年に　特性検定試験及び系統適応性検定試験を実施した結果、‘桔梗４号’は根腐病抵抗性を有　し、収量性及びさや形質が優れたことから、実用品種として有望と判定され'さやたろう'と命名登録された。
2. エンドウ根腐病に対して圃場抵抗性を有する（表１）。
3. 花色は濃赤で、開花日数は45～48日で早生種に属し、初花房節位は７～８節である。草姿は高性で、草丈、節間長、茎径は‘電光30日絹莢’と同等で、地際部からの１次分枝　が４～５本発生する下位分枝型である（表２）。
4. 温暖地、寒冷地の春まき栽培、寒地、寒冷地の初夏まき栽培に適し（デ－タ省略）、移　植栽培及び直播栽培ともに‘電光30日絹莢’と同等の高い収量を示す（表２）。
5. 若さやの大きさは‘電光30日絹莢’と同等で、さやは軟らかで曲がりが少なく、さやの　緑色度はやや淡いもののキヌサヤエンドウとしての利用に適する（表３）。

成果の活用面・留意点

1. 栽培適地は、温暖地及び寒冷地の春まき栽培、寒地及び寒冷地の初夏まき栽培である。
2. 'さやたろう’の有する抵抗性は圃場抵抗性であるため、菌密度が高い圃場では発病する　恐れがあるので、深耕、排水対策など菌密度を高めない耕種的な防除も併用する。
3. 栽植密度は400～800株／ａ程度とし、これ以上の過度な密植は避ける。

• カテゴリ: 病害虫 育種 寒地 さやえんどう 直播栽培 新品種 中山間地域 抵抗性 根腐病 品種 防除