タイトル | 杭群が設置された河床上の平面流れの計算法 |
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担当機関 | 農業工学研究所 |
研究期間 | 1995~1995 |
研究担当者 | |
発行年度 | 1995 |
要約 | 河床上の堆砂やミオ筋のコントロールを目的として河床に設置される杭群の水理機能評価と設計を行うための非定常平面流れ解析法を開発した。 |
背景・ねらい | 農業用水の取水被害、農業用ダムの堆砂問題、河口閉寒による排水障害など、排水河川の土砂堆積域での問題がしばしば発生している。河川の土砂問題に対処するため、昨今では例えば透過性の水制工などが近自然工法として改めて見直され始めている。このような背景から、杭を一定間隔に組み合わせたシンプルな構造を持つ杭群の水理機能に着目して土砂堆積域における適用性を検討し、実験的には一定の効果が認められた。そこで、河床上に杭群が設置された場合の流速分布の変化パターンを定量的に解析できる数値解析手法の開発を行った。 |
成果の内容・特徴 | 杭群を含む流れ解析においては、杭群周辺の土砂の動きを再現できる精度で、安定した流速解を効率的に得ることが目標となる。以下の手順で計算方法を検討した。 ①一定の間隔で隣接する杭から構成される杭群の水理機能を調べるため予め行った水理実験では、杭群を構成する各杭を波源として形成される波面の形状と流速分布のパターンは、流れのフルード数Fr=1.0を境にして大きく変化した。 ②実験結果から判断し、基礎式として2次元非定常流れの浅水流方程式と水流の連続式を選んで保存形式に書き直した。これをスタガード格子上で差分化して、ADI法を用いて実験で対象とした流れを解いた。原則として計算の全領域で、全ての項を中央差分形式に開くが、射流計算時のみ風上差分形式を適用した。 ③杭の近傍の非線形項と粘性項の計算では、杭境界上における流速・流量点の取り扱いをフルード数の違いに応じて変更した。すなわち、杭境界上の流速・流量点については、射流の計算で主流方向に対する全ての側面でslip条件とした。常流の計算では、杭群の外側2側面の流速点を除き他の側面では全てno-slip条件とした。以上に該当しない杭境界上の流速・流量点は全て差分に使用した。 ④計算の初期条件は、予め杭群の無い流れの定常状態に、瞬時のうちに杭群が設置された直後の水理条件とし、水深・流速値が殆ど変化しなくなった時点で解とした。 ⑤上記の計算方法により、常流と射流、杭の本数の違いに基づくいずれの計算条件でも、水面形と流速分布の計算結果は実験値と良好な一致を見た。例えば射流の計算条件では、杭群背後に発生する衝撃波を良好に再現した(図1)。 ⑥杭群周辺の洗掘・堆積現象に寄与すると考えられる杭群周辺の流れの急加速・急減速の現象を、対象とした計算条件で、満足のできる精度で再現できた(例えば図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 杭幅程度の計算格子間隔であれば、流れの物理性を損なうことなく、土砂の輸送に関わる杭群周辺の流速分布の計算が可能である。ただし、解析の精度上、杭の形状や材質に関与するような局所的な現象を評価することはできない。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | 輸送 |