泥岩地すべり地のすべり面付近の地下水の特徴

タイトル 泥岩地すべり地のすべり面付近の地下水の特徴
担当機関 農業工学研究所
研究期間 1997~1997
研究担当者 今泉眞之
竹村武士
濱田浩正
発行年度 1997
要約 中性子水分検層で検出した泥岩地すべりのすべり面付近には、高濃度のNa+-HCO3-型の地下水が分布する。この地下水は、この付近に分布するCa、Mg系スメクタイトとの平衡関係から形成されたものである。
背景・ねらい  新第三紀の泥岩分布地帯はわが国の典型的な地すべり地帯を構成している。これまで、地すべり斜面の水文地質構造は、試錐のコア判定、土層区分をもとに推定されていたが、これらの方法による土層区分は、水質変化等の水文現象を反映していない場合が多かった。本成果は、先に示した(平成5年度成果情報)中性子水分検層法で検出した地すべり面と3m毎の揚水試験時に採水した地下水水質の関係からすべり面付近の地下水の特徴を示す。
成果の内容・特徴
  1. すべり面の分布:図-1に、ボーリング孔KB-1、JB-2、JB-3の含水比変化曲線と完全軟化含水比曲線の関係を示す。両曲線の交差点(仲野ら,1992)が地すべり面を示している。図中の点線は地すべり面を示している。図から、新鮮泥岩(N値50以上)に達する深い地すべり面の他、地すべり冠頭のKB-1付近では表層の地すべり面が複雑に発達していることが推定された。
  2. すべり面と地下水水質の関係:図-2に、すべり面位置と水質との関係を深度別ヘキサダイアグラムで示した。各ボーリング孔の最上部の地下水は、雨水と同じ低濃度の地下水水質を示す。高濃度のNa+-HCO3-型の地下水はボーリング孔の最深部に分布するのでなく、中性子水分検層から推定された地すべり面付近に分布している。KB-1の4段目で採水された低濃度の地下水は、地すべり冠頭の亀裂を通じで地表付近の地下水が地下に侵入したと考えられる。
  3. 鉱物組成:JB-3の1m間隔で採取した試料のX線回折分析結果を表-1に示した。すべり面は4.8mに推定されており、5mの試料はすべり面の試料である。JB-3のコアに含まれる鉱物はどの深度でも石英とスメクタイト(モンモリロナイトはスメクタイ族に含まれる)を主体とし、特に3~5mの深度でスメクタイトが顕著であり、また結晶化度も高い。スメクタイトのX線回折像では底面反射(00l)が現れる。d(001)の値は層間イオンの種類により10~20Åの間で変化し、層間イオンがNaの場合13Å、層間イオンがCa、Mgの場合15Åになる(粘土ハンドブック:技報堂出版)。深度1~5mのスメクタイトのd(001)は15Åを示し、深度6m以深のスメクタイトのそれは13Åを示す(表-1の反射)。したがって、崩積土中のスメクタイトはCa、Mg系であり、新鮮泥岩中のスメクタイトはNa系である。
  4. 地すべり面付近の水質の特徴:図-3にKB1、JB3の地下水水質と鉱物のAl2O3-SiO2-MgO- H2O系の安定関係を示した。各孔の水質は浅層から深層へ矢印で結んである。各孔の地すべり面付近の水質には記号を○で囲んで表示した。KB1、JB3のすべり面付近の水質はMgモンモリロナイト領域に分布する。
成果の活用面・留意点 水質分析用地下水は、揚水試験等の方法で採水する必要がある。
図表1 227761-1.gif
図表2 227761-2.gif
図表3 227761-3.gif
図表4 227761-4.gif
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