タイトル |
成層土壌への浸潤におけるフィンガー流の維持メカニズム |
担当機関 |
農業工学研究所 |
研究期間 |
1995~1997 |
研究担当者 |
安中武幸
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発行年度 |
1997 |
要約 |
上層が細粒で下層が粗粒の成層条件での降下浸潤におけるフィンガー流において、下層に給水水圧上昇過程の水浸入のしきい値(動的水浸入圧)が存在すれば、フィンガー先端の降下に伴って流路内水圧が低下し、流路が安定化する。
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背景・ねらい |
フィンガー流は土壌断面の一部のみに速い流れを生じる選択流の1形態であり、地下水涵養・汚染、灌漑効率及び土壌の溶脱などに大きな影響を与える現象として注目されている。フィンガー流は初期に乾燥した細/粗成層や撥水性土壌への降下浸潤で生じることが知られているが、フィンガー状流路が何故断面形状を維持できるのか、すなわちその維持メカニズムは良く分かっていない。そこで、ガラスビーズを用いたフィンガー流形成実験による流路性状及び流路内の水圧分布変化の計測、及びガラスビーズ充填層の動的水浸入特性の実験的検討を行い、これらの結果から、フィンガー流路先端部発生後の流路安定化過程を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 初期乾燥条件では明瞭で安定なフィンガー流が形成され、流路内の水圧は層境界から フィンガー先端に向かって高くなるとともに、先端の降下に伴って低下する。一方、初 期湿潤条件では分岐の目立つ流路が形成され、それが時間経過に伴って水平方向に広が る。また、流路内の水圧分布も初期乾燥条件とは異なる(図-1)、(図-2)。
- 初期乾燥試料では給水水圧-2.2cmで初期浸入フラックスが不連続的に増大するが、湿 潤試料ではそれが不明瞭である。給水水圧上昇過程の水浸入のしきい値を動的水浸入圧 と定義する時、乾燥試料ではそれが存在するが湿潤試料では存在しない(図-3)。
- 下層に動的水浸入圧が存在する場合、水の浸入により飽和に近い半球状のフィンガー 先端が形成された後、その降下過程に流路内水圧の低下が起こる(図-2)。この水圧低 下のため水平方向の浸潤が停止し流路が安定化する(図-4)。
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成果の活用面・留意点 |
本成果は粒径0.4mmのガラスビーズという限られた試料についての結果であるため、砂や撥水性土壌などフィンガー流の発生が知られている他の試料についても検討が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
乾燥
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