タイトル |
小型浮遊式ブイを用いた流況観測システム |
担当機関 |
農業工学研究所 |
研究期間 |
1998~2000 |
研究担当者 |
桐 博英
中矢哲郎
藤井秀人
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発行年度 |
1998 |
要約 |
現地での流況観測を行うため、ディファレンシャルGPSを搭載した小型浮遊式ブイによる流況観測システムを開発した。本システムにより、流況の現地観測が高精度で、かつ、容易に行うことができる。
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背景・ねらい |
実際の流況の把握や水理模型実験、数値解析結果のクロスチェックのため、流況の現地観測は重要である。従来、河川域や沿岸域では、観測用センサを有するブイや船舶を固定したり、観測施設を設けて定点での流況観測が行われていた。また、排水門などから出る流況は、複数個のブイを放流し、航空写真によりブイの軌跡を求めることで観測を行っていたが、観測精度が低く費用もかかっていた。そこで、現地の流況を容易に観測できる小型浮遊式ブイを用いた流況観測システムを開発した。
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成果の内容・特徴 |
小型浮遊式ブイの概要と特徴:本システムは、ディファレンシャルGPS(DGPS)とパソコンを搭載した小型ブイ(写真1)を浮遊させ、ブイの軌跡をパソコンに記録することにより、ブイの存在する地点の流況を求めるものである。本システムには、以下の特徴がある。
- 測位:ブイの測位に用いたDGPS受信機は、複数個のGPS衛星からの信号と海上保安庁が提供するDGPS位置補正用ビーコンデータをもとに測位を行う(図1)。このため、自ら基地局を設置する必要がなく作業性に優れている。また、測位精度は1m以内である。
- ブイ標体:本システムで用いた小型浮遊式ブイは、全ての機器をブイ標体内部に設置し、ブイ標体の安定性を向上させた。これにより、ウェート部を小さくでき、水深60cmの極浅い水域まで観測が可能である。
- ブイの重量は約45kgであり、2名の作業員により船からの積み上げ、積み下ろしが可能である。
現地実証試験の概要:実施例として、排水ゲート外海側に生じる流況を測定した。測定開始時には全閉であった排水ゲートは、測定開始約1時間後に30cm開かれた。測定時間は、約2時間であり、その間1秒毎にデータを収集した。
- 5分毎の小型浮遊式ブイの軌跡を示したものが図2である。測定開始後、ブイは潮の流れに乗り、ゆっくりと北へ移動する。排水ゲートが開いた時点で、ブイを船で排水ゲート中央部へと移動させた。その後、ブイは、排水ゲートから出た流れに乗り、北東へと移動していく様子が読み取れる。
- 図3は、流速の変化を示したものである。これから、排水ゲート全閉時は、3m/min程度であった流速が排水ゲートが開けられた後は、15~25m/minとなっているのが分かる。また、流れが沖へと進むに従い(時刻が経過する)、流速が遅くなっていく様子を良く捉えている。
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成果の活用面・留意点 |
- 塩分濃度計などのセンサを取り付けることにより環境観測も可能である。
- 内部電源の容量から、本システムによる観測時間は7時間程度である。
- ブイの軌跡から流況を解析する際、風の影響として流速の3~5%補正する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
くり
GPS
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