12.富栄養化した湖沼水を用いた有用作物栽培システムの提案

タイトル 12.富栄養化した湖沼水を用いた有用作物栽培システムの提案
研究期間 2001~2002
研究担当者 端 憲二
本間新哉(南近畿土地改良調査管理事務所)
柚山義人
発行年度 2002
要約 富栄養化している霞ヶ浦の湖沼水を積極的に水田の潅漑用水として用いる無肥料での有用作物(イネ)栽培は,湖沼からの窒素の回収,その作物への変換及び水質浄化への貢献を目指す新たな発想でのシステムである。
背景・ねらい  農業は元来,太陽エネルギーを利用して有機性廃棄物を食糧に変換する環境保全的な営みであり,これを現代的なシステムとして再構築すべき時期にきている。本研究は,富栄養化している霞ヶ浦の湖沼水を水田に潅漑し,無肥料で有用作物(イネ)を栽培することによって,水質浄化を通じた再資源化の可能性をさぐることを目的とした。ここでは窒素に焦点をあてた。
成果の内容・特徴
  1. 霞ヶ浦から用水を取水する無農薬区と農薬区(除草剤キリフダを田植直後に一度のみ使用)の試験水田において,無肥料でイネ(コシヒカリ)の栽培を行った。水田での滞留時間は,1.5時間と極端に短く設定した。潅漑用水の平均T-N濃度は0.83mg/L,無機態窒素濃度は0.28mg/Lであった。潅漑期における10a当りの窒素除去量は無農薬区が16.6kg,農薬区が14.9kgと推定された。無農薬区の方が高いのは,イネ以外の植生の影響と考えられる。(表1,表2,図1)

  2. 窒素除去の主体はSSの沈降・吸着であった。潅漑用水のSSの平均濃度が22.8mg/Lであるのに対し,地表排水のSS濃度は無農薬区が9.7mg/L,農薬区が12.6mg/Lであった。SSに含まれる窒素成分は1.33%であった。

  3. 無農薬区,農薬区の玄米収量は,隣接田(対照区)の460kg/10aに対し,それぞれ63%,88%であった。この差は窒素吸収量にも現れ,水田内で除去された窒素量のイネによる利用率は,無農薬区が29%,農薬区では42%であった。

  4. 玄米の品質については,表1に示すように対照区も含め三者の間に明らかな差はなかった(表2)。また,食味試験(日本穀物検定協会分析)の結果,滋賀県中主町の「日本晴」の基準に比べ対照区と農薬区は有意にやや高い評価となった。

成果の活用面・留意点  富栄養化した湖沼水を水田の潅漑用水として積極的に活用し,無肥料でイネを栽培するという新たな発想でのシステムは,資源回収と水質浄化に貢献する。用水供給の増加に伴う電気代の支出,このシステムを用いるための用排水施設の整備,有用作物の品質保持のための継続的な土壌診断について検討しておく必要がある。

カテゴリ 肥料 病害虫 除草剤 水田 土壌診断 農薬 品質保持 良食味

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