15.琉球石灰岩帯水層の地下水流動特性

タイトル 15.琉球石灰岩帯水層の地下水流動特性
研究期間 2002~2004
研究担当者 今泉眞之
石田聡
土原健雄
発行年度 2002
要約 沖縄本島南部の海岸付近の琉球石灰岩では洞くつが海岸から500m以内,標高10m~-50mの範囲に分布する。洞くつのある帯水層の地下水位変化グラフには、ある位置に停滞部や水位低下時の屈曲部が出現する。塩淡境界が不明瞭になり,数百m幅の汽水域が発達することがある。農業工学研究所・地域資源部・地下水資源研究室
背景・ねらい  琉球石灰岩帯水層地域は,多数の洞くつが発達するため有効間隙率が大きく地下水の貯留に適している。そのため,国および県によって大規模地下ダムが施工されている。地下水流を止水壁で遮ることによって地下水流動環境が大きく変化したが,その影響は定量的に明らかにされていない。従来より,石灰岩の洞くつは地下水面付近に形成されること,第四紀最終氷期から後氷期の海面上昇にともなう地下水面の上昇期に一次的に停滞した古地下水面が形成されたことが第四紀学から明らかになっている。そこで、地下ダムによる地下水水文環境の変化を解明するため、地下水位の変化及び電気伝導度(EC)の鉛直分布における洞くつの影響を明らかにする。
成果の内容・特徴  沖縄本島南部米須地下ダム流域のボーリング柱状図と止水壁工事の進捗率4.6%時点(1994年22孔)と65%(1998年40孔)で行った観測孔の水位・電気伝導度(EC)の測定結果を整理した。琉球石灰岩は次の地下水流動特性を示す。




1.
琉球石灰岩中の洞くつ(径0.1~1m)は海岸から500m以内,標高10m~-50mの範囲に分布し,洞くつ密集部の地下水位は海水準に近い(図1)。


2.
洞くつがある場合の地下水位変化は,ある標高レベルで地下水位の停滞や地下水位低下曲線の屈曲点を示す(図2)。米須流域では5階層で洞くつが分布している。


3.
観測孔のEC鉛直分布の違いは,ECの分布形態でAからEの5タイプに分類できる。Aは塩水侵入の生じていないタイプで内陸側に分布する。B,CはECが屈曲点を持ち,不連続的に変化するタイプで,塩淡境界が明瞭である。Cの方が汽水域が数m厚い。Dは,淡水から塩水まで漸移的に変化するタイプである。Eは地下水面からある深度の屈曲点まで均質高EC部が分布するタイプである。DとEは海岸付近に分布する(図3)。D,Eが分布する部分では,カルスト帯水層に見られる数百m幅の汽水域があるので(図4),このタイプのECの形態はカルスト帯水層特有の現象である。




4.
止水壁築造による塩水侵入阻止効果はC→A,B→AまたはC→Bに変化することで示される。


成果の活用面・留意点 B,Cタイプの領域は,分散流卓越層で移流分散方程式が適用できる範囲である。D,Eは洞くつ流が卓越するため,移流分散方程式は適用できない。

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