タイトル |
32.農産物冷却の補助エネルギーとしての大気放射冷却の集蓄熱利用 |
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研究期間 |
1999~2003 |
研究担当者 |
奥山武彦
佐瀬勘紀
小綿寿志
森山英樹
石井雅久
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発行年度 |
2003 |
要約 |
大気放射冷却および低温外気を利用し、スカイラジエータにより冷水を製造し、それを用いて農産物冷蔵庫の冷房を行う。これにより、通常の電気冷房で熱負荷除去に費やされるエネルギーの一部を、自然エネルギーで補うことが可能である。
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背景・ねらい |
青果物の冷却・冷蔵施設においてはそのほとんど全てにフロン系冷媒を用いる電気冷凍機が装備されている。この環境負荷物質の使用を抑えることを主目的として、夜間の大気放射冷却の集蓄熱利用を行うことにより、農産物冷却における熱負荷除去に費やすエネルギーの一部を補助するシステムを試作し、その性能の解析と評価を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 研究用に開発されたハイブリッド蓄冷式冷蔵システム(図1)は、1~15℃程度の範囲で冷房を行う「低温室」と、10℃程度以上で冷房を行う「中温室」とを備える。最大の特徴は、夜間の大気放射冷却および低温外気を利用し、スカイラジエータに水を循環することにより冷水を製造し、それを用いて中温室をフロンフリーで冷房することである。低温室は安価な夜間電力を用いる氷蓄熱式冷房システムにより冷房する。
- 外気温と集熱温度(水温)の温度差と冷熱集熱能力とは直線関係にある(図2)。理論的には温度差が0のときに対流熱伝達の影響が最小となるが、このときの冷熱集熱能力は平均大気放射冷却熱流束の値に極めて近いことから、大気放射冷却のエネルギーは見かけ上は100%回収されているといえる。外気温が集熱温度より低いほど対流熱伝達による熱交換が卓越し、冷熱集熱能力は温度差1℃当たり約15W・m-2増加する。
- 約1.6m2の中温室に85~170Wの熱負荷(ホウレンソウ160kgの15~23℃における呼吸熱に相当)をかけて冷房すると、11月上旬の晴天日においてはスカイラジエータによる冷水のみを用いて室内を13~15℃に維持することが可能である(図3)。
- 消費電力を基準とする成績係数(COP)で評価すると、冷熱集熱については省エネルギーであるといえるが、放熱を含むシステム全体ではCOPが1を下回る(図4)。
- しかし、中温室は鮮度保持に不可欠な低温高湿度環境の創出が容易であり,とくに10℃程度以下では低温障害を起こす品目の冷蔵には単独で使用できるという特長をもつ。
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成果の活用面・留意点 |
- 野菜の予冷を目的とする場合は両室間の断熱隔壁を取り外し、最初に中温室の冷却器であら熱の除去を行った後に、低温室の冷却器で5℃程度の目標温度まで冷却する。
- 実用上スカイラジエータで有効な集熱量が得られる期間は、関東では概ね4~5月および10~11月の晴天の夜間、または外気温が集熱温度より低下する日である。
- COPの改善のためには、集熱効率のより高いスカイラジエータの実現が期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
省エネ・低コスト化
ほうれんそう
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