全国の農業水利施設の人身事故の実態と事例地区の安全対策施設の効果

タイトル 全国の農業水利施設の人身事故の実態と事例地区の安全対策施設の効果
担当機関 (独)農業工学研究所
研究期間 2001~2003
研究担当者 中 達雄
端 憲二
発行年度 2005
要約 農水省(水利整備課施設管理室)による全国調査では、人身事故は、50代以上、特に70代以上の比率が高く、その原因は不明が多い。事例地区の用水路での43年間の実績では、用水路沿いのネットフェンスの設置は、全体の事故を1/3に減少させ、特に、中高生以下の若年層の死亡事故をゼロにした。
キーワード
人身事故、ネットフェンス
背景・ねらい 農業・農村の多面的機能の発揮や農業用水の多目的利用の問題を背景に、農業水利施設の人的安全性の確保は重要な課題である。そこで、本調査では、安全対策マニュアル作成のための基礎的知見及び資料を得るために、行政部局や管理主体が保有するデータを収集し、全国の農業水利施設における人身事故実態を把握し、事例地区における用水路(開水路)の安全対策施設の効果を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 全国的人身事故の発生実態;(1)全国の人身事故は(農水省農村振興局調べ、1997-2000年)、年平均件数で、79.8件/年、人数で84.3人/年の発生実態にある。国民1人当りの人身事故確率は、約7.03×10-7人/年である(日本の人口を1.2億人としての試算)。なお、2000年の我が国の全産業における死亡者数は、1,889人であり(厚労省調べ)、この値との比較からも対策が望まれる。(2)事故が発生した水利施設としては、用水路が52%を占め、次いでダムの25%である(図1)。年令は、小学校高学年未満の児童・幼児と50代以上の割合が高い(図2)。(3)事故発生時期は、4月~8月のかんがい期が多くなっている(図3)。(4)原因別では、不明を除き車・自転車の運転中が25%と最も多く、次いで水遊び、釣りの20%となっている。幼児と高齢者から整理すると、10代未満では、遊びが、70代では不明、次いで、自転車・車などの運転中での原因が突出している(図4)。
  2. 事例地区の用水路における安全対策施設の効果;(1)本地区(愛知用水地区)は、昭和30年代初めに導水事業により全長112km(内、開水路区間65.2km)の長大水路が造成され、その後、昭和50年代後半から更新事業が実施された大都市を縦断する都市型農業用水路である。(2)過去43年間(1961-2003)に事故件数154件、死亡者数134名を記録している。事故確率(死亡)は、0.0478人/年・kmである。(3)昭和50年から水路のフェンス工事(ネットおよびメッシュフェンス、高さ;1.2、1.5、1.8m)が実施され、その効果を見ると、転落・交通・遊泳事故件数は、設置前の約3/1に減少し、フェンス設置の効果は大きい。また、中高生以下の死亡事故は、フェンス設置後の昭和60年以降激減し、平成9年以降は、死亡者をゼロにした(表1)。
  3. 今後、高齢化社会を迎えるに伴い、社会的弱者である高齢者の事故原因を解明し、フェンス設置の効果の限界や対策を検討する必要がある。
成果の活用面・留意点 安全対策施設の計画設計施工法に関するマニュアル作成のための基礎的知見としての活用が期待される。
図表1 228067-1.gif
図表2 228067-2.gif
図表3 228067-3.gif
図表4 228067-4.gif
図表5 228067-5.gif
カテゴリ 水管理

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